テトラさん、WorldShiftっていったい何ですか?
WorldShiftとは、持続可能で平和な世界に向けて、ひとりひとりが考え、宣言し、行動する、世界的なムーブメントです 。いま人類が直面しているさまざまな危機や問題を共有し、考えるために、2009年にアーヴィン・ラズロ博士が呼びかけ、ロンドンでWorldShift会議が開かれました。その会議で発信された「世界的緊急事態におけるWorldShift 2012宣言」からWorldShiftはスタートしています 。
WorldShiftは「World」と「Shift」を結びつけ、「WorldShift」というひとつのことばとして、世界は変わりつつある、世界は変わらなければいけないことを表しています。全人類が22世紀に直面している文明の危機に対する意思表明です。私は2009年に来日したアーヴィン・ラズロ博士に出会い、WorldShiftを日本で広げていくお手伝いをするために、2010年にWorldShiftネットワークジャパンを立ち上げました。WorldShiftの活動を ソーシャル・ムーブメントと位置づけ、「これからがどんな世界であることを望むか?」という問いかけを、「WorldShift宣言ロゴ」を用いて行っています。
「WorldShift宣言ロゴ」の上には、自分が変えたいこれまでの世界のしくみや生き方、考え方を記入します。下には、自分が実現したいこれからの世界のしくみや生き方、考え方を記入します。大切なのは、変えることを実現する「→」にあたるシフトの方法を考えることです。ひとりひとりがこれから望む世界を書き込み、これまでの「世界を変える」ことを宣言することで、WorldShiftが「じぶんごと」になっていきます。
テトラさん、宣言が社会を変える力となるのですか?
WorldShiftは国や自治体、企業や団体、個人まで、社会のいろいろなレベルで共有していきます。扱う対象もエネルギーや環境問題、経済や雇用、教育や衣食住など全ての分野です。シフトの取り組みは、企業だったら社会課題を解決するソーシャルビジネスであったり、NPOなどの団体だったら何らかのアクションであったりするかもしれません。
では、個人ではどうか? ひとりひとりの力ではたかが知れていると言う声も聞こえてくるかも知れません。しかし、文化人類学者として著名なマーガレット・ミードは、「世界の変化はひとりの良識ある市民から始まる」と述べています。実際、今日私たちが目撃している大きな社会の変化は、いずれもひとりの市民の行動から発し、それをフォローする人たちが生まれ、お互いがつながり、大きなうねりとなることで、社会を変える力となっています。
大切なのは「社会は自分たちでつくるものである」という考え方です。この世界や社会はあらかじめあったものではなく、国や政治家が用意してくれたものでもありません。わたしたちひとりひとりが主体となりつくりあげていくものです。その視点に立った時、自ずと「社会は自分たちの力で変えることができる」という考えを持つことができます。これまでの社会の仕組みや制度、人々の考え方や行動を見直すことにつながります。新たな視点や価値観からこれまでを捉え直し、考えてみる。いつの間にか固まっていたマインドセットを一度リセットするのです。
テトラさん、どんな考え方やものの見方が必要なんですか?
「その問題をもたらした意識や思考のままでは、その問題を解決することはできない」とはアインシュタインのことばの引用です。目の前の問題の解決を、その問題が生じたときの考え方やものの見方で試みても、分析はできても根本となる原因の解決にいたることはできません。わたしたちの文明は危機的な状況にあり、このままでは22世紀まで維持できないと言われています。その理由も100以上あるという研究結果も出ています。生態系や経済、社会と複雑に絡み合った問題の解決には、これまでとは違った考え方やものの見方で問題を捉え直してみる必要があります。
ひとつの例をあげましょう。近い将来、さまざまな技術の進歩により、わたしたちの職業のおよそ半分がロボットに取って代わられると言われています。このことはわたしたちに「自分たちの雇用が失われるのではないか」という不安を呼びおこします。確かにこれまでのマインドセットでは、雇用の機会を逸することは失業につながり、収入の手段が途絶えることで生活が不安定になると考えるのは致し方ありません。しかし、別の視点で捉え直してみるとどうでしょう。人間の雇用は失われても、ロボットが補完することで全体の生産性が失われることはありません。人間に変わってロボットが生産性を維持することで、わたしたちの労力は半分で済むことになります。結果として人類は新たな余暇という時間を持つことになります。
失業という不安なのか、それとも新たな余暇という可能性なのか。ひとつの現象に対してマインドセットを変えるだけで、そこに現れてくる未来の姿はまったく異なったものになります。AIの技術を駆使して行われた京都大学と日立の共同研究によれば、2050年までの未来には実に2万通りものあり方があると予測されています。多様な未来のあり方からどれを選択し、わたしたちの未来としていくのか。それを決めるのはわたしたち自身であり、そのためには新たなマインドセットへのリセットが必要です
次号へ続く
WorldShift Kyoto Forum 2018 −まなぶ、つながる、うごく−
2018 年2 月4 日(日) 13:00 -18:00 京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)
主催:一般社団法人ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン
共催:京都造形芸術大学、公益財団法人 信頼資本財団
【プログラム】
ビデオメッセージ:アーヴィン・ラズロ博士(世界賢人会議「ブダペストクラブ」創設者・会長/システム哲学者)
基調プレゼンテーション:谷崎テトラ(ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン代表理事/放送作家/京都造形芸術大学教授)
ワールドシフト・プレゼンテーション:並河進(株式会社 電通/クリエイティブディレクター) 佐藤正弘(東北大学准教授/環境経済学・情報経済論)
佐々木重人(ライター/ダイレクトデモクラシー) 熊野英介(公益財団法人信頼資本財団 理事長/アミタホールディングス株式会社代表取締役)
丹下紘希(人間/映像作家) 兼松佳宏(勉強家/京都精華大学特任講師) 西村勇哉(NPO 法人ミラツク代表理事/国立研究開発法人理化学研究所未来戦略室 イノベーションデザイナー) 伊藤東凌(建仁寺両足院 副住職) /他
ファシリテーター:本間正人(京都造形芸術大学教授・副学長) 大江亞紀香(コア・クリエーションズ代表/コーチ・NLP トレーナー)
お申込み:事前申込要: 2/2( 金) まで
参加費( 前売のみ・全席自由) :一般:2,000 円 / 学生・招待:無料 /
先着順で読者招待枠があります。詳しくはhttp://tunagaru.org/akiyama-essay/86 または admin@teamforum.or.jpまで「読者招待希望」の件名でご連絡下さい。
お問合せ:075-275-1330(平日10 時-17 時)ワールドシフト京都フォーラム事務局