高齢者などの摂食・嚥下障害患者に対して、人工的水分・栄養補給(AHN)を行い、生きようと意思決定したならば、多くの摂食・嚥下障害患者のもっとも適切な栄養投与経路は胃瘻である。AHNを行わずそれ以上の延命を望まないなら、「何もせず」に、経口を細々続け、唇を湿らせる程度にするのが原則となる。「胃瘻栄養」と「何もせず」の間に存在する経鼻栄養、静脈栄養、末梢点滴は摂食・嚥下障害患者に対する栄養法として中途半端で邪道ということである。特に適応上議論のある認知症に関して、欧米では医学的観点からもPEGの効果は認められないとされ、合理的にPEGの適応はないことが導き出されている。しかし、本邦ではPEGは生存も効果も良好であるゆえに、AHNをすると意思決定した場合は、PEGをして長く生きることを、一方、AHNを選択しない場合はPEGを施行せず、早く死ぬことを意味する。すなわち、生きるか死ぬかの選択なのである。 “to PEG or not to PEG”がイコール” to be or not to be”であることは、PEGの選択が、本人と家族、それに医療者にも重たい決断を強いることになる。患者と家族ができるだけ負担なく、的確な判断を下す支援の体制づくりが重要である。医療者・介護者の役割は、患者や家族がAHNの意思決定に参考になる情報を提供し、共に考える場を提供すること、そして、PEGを行って生きることを選んだ場合には、患者や家族のQOLの向上がいかになしえるかを工夫し、それを実行することである。