33.『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』書評 -2017年 初頭に考えたこと

社会医療人の星

あけましておめでとうございます。

本年もチーム医療フォーラムを宜しくお願いします。

本日より仕事始めの方が多いと思います。

素晴らしい1年にしていきましょう!

この100年間で社会に最も大きな変化をもたらしたものは何かと考えた時、

私が第一に思うのが、寿命が2倍になった点です。

現生人類 (新人=ホモ・サピエンス)の誕生は20万年前といわれています。

彼らの平均寿命は20歳未満だったという説が有力です。

食料を狩猟に頼っていた時代には、栄養補給は極めて不安定で

狩猟に伴う外傷なども寿命を縮める一因だったのかもしれません。

乳児死亡や感染症に対しても無力であったに違いありません。

それが文字や鉄器の発明とともに、農耕技術を獲得した数千年前から

それまでの20年足らずの寿命が一気に2倍になりました。

40歳を超えるようになったのです。

そして、この100年の医学や公衆衛生の進歩により

平均寿命はさらに2倍の80歳を超えるようになったのです。

私はこのあたりで平均寿命は頭打ちかと考えていたのですが、

それは過渡期に過ぎないようです。

私の予想を遥かに超えた

「人生100年時代」の到来とその対策を提案した書が出ました。

『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』:リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著(訳:池村千秋)

『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』:リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著(訳:池村千秋)

副題には「100年時代の人生戦略」とあります。

私が本書から掴んだのは、第一に

「もうすぐ人生100年時代が到来する」という点です。

結論として著者が言いたかった点は

一部の有形、無形の両方の資産に恵まれた人以外は

「結局、長く働きなさい」という言葉に尽きるかと思います。

これを聞くと、長く辛い労働人生が続くと思ってしまうかもしれませんが、

それは心の持ちようです(本書を読めば、その誤解が解けるでしょう)。

私は常々、平均寿命と健康寿命との差が10年あることに注目し

「人生ラスト10年問題」という切り口で物事を捉えるようにしてきました。

このラスト10年をどう生きるかの設計が、

いまの時代、個人にも社会にも問われているのだと思います。

その答えに直結するような内容が書かれています。

人生ラスト10年問題

本書の主張である長く働き続けられるスキルと心身両面の健康を維持することへの対応が

結果として、人生100年時代を充実させる最良の策なのだと私は捉えました。

私の読書メモから(矢印以下は私の思うところ)

  • 人生はより長く、健康になる。

    →人生100年時代には、過去の同年代と比較して、かなり健康であるはずである。
    したがって、今の価値観で来るべき時代を捉えてはいけない。
  • エクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、ポートフォリオ・ワーカーという新しいステージが出現する。

    1.幅広い針路を検討する「エクスプローラー(探検者)」
    2.自由で柔軟な小さなビジネスを興す「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」
    3.二足、三足、四足のわらじを履く「ポートフォリオ・ワーカー」→高校や大学を卒業した直後に一斉に就職するという従来の日本のスタイルは、単一で変化への受容性が少ないため、長い職業人生(特に最終盤の職業)を考慮すると、むしろリスクである。→これからの若者にはエクスプローラー期が必須かもしれない。
  • スキル、知識、仲間、評判、健康、生活、友人関係、アイデンティティ、人的ネットワーク、オープンな姿勢が大事

    →すでに社会で活躍している人は、これらを身に付けている。

  • 労働市場に存在する職種は、これから数十年で大きく入れ替わる。

    →AIの進歩は多くの職を消失させるだろうが、新たな職も生み出すはすである。

    →AIには出来ないより人間的な、人間にしか出来ないものが大切になるだろう。

  • 男女の役割分担が変わる。質の高いパートナー関係が必要になる。

    →人生100年時代に必要なのは、最終労働賃金の50%の収入であるという。この50%という数字が実は控えめな数字であるという点に愕然!

    →その数字を実現させるため、共働きが日本でも当たり前になるだろう。

    →上記の経済力もさることながら、それ以上に家族や友人による無形資産が重要なようだ。

  • 数十年単位での役割の調整が必要。高度な信頼関係と徹底した計画が不可欠。

    →従来の価値観にとらわれない姿勢が大切。これからの社会は誰も経験したことのない社会であり、従来の手本は全く役に立たない。

  • 余暇は、リクリエーション=娯楽ではなく、自分をリ・クリエーション(=再創造)するために使いなさい。

    →社会における教育の重要性がこれまでとは比較にならないくらい大きくなる。

    →人生100年時代に相応しい教育のあり方が求められるであろう。

  • 各人のアイデンティティが変わっていく。

    →多くの人がマルチ・タレント化していく。ダ・ビンチ時代の到来!

本書は新しい時代への提案書ではありますが、

正確には全ての答えを提示している訳ではありません。

問題提起の書という位置付けのほうが正しいと思います。

それだけに、多くの人に深く考えるキッカケを与え、

社会に大きなインパクトをもたらすだろうと思います。

2017年初頭は、こんなことを考えながら出発しました。

「人生100年時代」の設計が、個人にも社会にも問われ始めています。

その問いに正面から格闘する1年にするつもりです。

皆さんは、どんな新年の出発をされたでしょうか?