127. 書評『なぜ、優秀な人ほど成長が止まるのか』

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社会医療人の星

現生人類のホモ・サピエンスは、

営々と外的足場を整え、進歩してきました。

*外的足場(External Scaffold):アンディ・クラーク『現れる存在』

私は、科学技術の発達、社会における法の整備、各種制度の充実、文化の成熟などから、

理想社会実現のための準備はすでに整っていると感じています。

問題は、富を、価値を適正に配分できない人間の弱さにあると思っています。

経世済民(けいさいさいみん)の学問である経済学を

“配分”の学問と称することに大賛成です。

この“配分”という古くて新しい問題にどう処するかで

理想社会の実現は決まってしまうような気がしています。

このメルマガでは、これまでに田坂広志氏の書評をいくつか書いてきました。

さらに氏の膨大な著作群から私が考えるキーワードで羅列してみます。

「生命論パラダイム」「ガイア論」「戦略論」「複雑系」「経営論」「社会起業家」「CSR」「仕事の思想」「プロ論」「弁証法」「未来予見」「多重人格」「成長」…

壮大な宇宙論、歴史や社会への深く鋭い洞察から始まって、組織や仕事の在り方に移行し、

最近では人間的成長や心の問題を扱った書籍が多いようです。

世の中全体が取り組むべきテーマが、

心に収斂してきているのかもしれません。

前置きが長くなりました。

本の中身に話題を移しましょう。

Amazonの「商品の説明」欄の目次を抜粋してみます。

田坂氏の著作はどれもそうですが、

「漏れなく、ダブりなく」のMECE(ミーシー)が徹底しています。

*MECE:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive

「壁」に問題が提起され、「技法」に解決策が整然と並んでいます。

見事としか言いようがありません。

(本書を読了後にこの目次を凝視すれば、激しくご同意いただけると思います。)

第1話 【学歴の壁】 「優秀さ」の切り替えができない ― [棚卸しの技法] 

第2話 【経験の壁】 失敗を糧として「智恵」を掴めない ― [反省の技法] 

第3話 【感情の壁】 感情に支配され、他人の心が分からない ― [心理推察の技法]

第4話 【我流の壁】 「我流」に陥り、優れた人物から学べない ― [私淑の技法] 

第5話 【人格の壁】 つねに「真面目」に仕事をしてしまう ― [多重人格の技法]

第6話 【エゴの壁】 自分の「エゴ」が見えていない ― [自己観察の技法]

第7話 【他責の壁】 失敗の原因を「外」に求めてしまう ― [引き受けの技法]

いくつかの珠玉の言葉を引用します。

「学歴的優秀さ」と「職業的優秀さ」とは全く違う優秀さであることに気づかず、もしくは、気づこうとせず、「学歴的優秀さ」に依存してしまい、実社会が求める「職業的優秀さ」を身につけ、「仕事ができる」ようになるための能力開発を怠ってしまうのです。

➡ 医者の世界には多いような気がしてなりません。肝に銘じます。

世の中で「反省」という行為と「後悔」や「懺悔」という行為を混同する傾向がある

➡「顔を洗って出直します」の言葉には、1ミリの反省もないと思い知りました

➡ 自分との対話を大切にしたいと思います。

人生を分けるのは、そうした苦労の経験から何を学んだかでしょう。

➡人間の「心の機微」を大切にします。

優秀な人ほど、周りの他人の欠点がよく見えてしまい、心の中で、「あの人は、これが欠点だ」「この人は、ここが問題だ」といった批判的な思いを抱いてしまうのです。

それが、優秀な人ほど、「人を好きになる」ということができない理由であり、…

➡深く納得!

師匠の持つスキルやテクニックを「真似る」ということの本当の意味は、…

…「真似をして、真似できないもの」を知ることです。

➡深い!!

自分のプロフェッショナルとしての技術や心得を、いつも厳しい眼差しで見つめ、
ときに厳しい声で指摘してくれる「師匠」を、心の中に育てておくこと

➡このような境涯を目指してみたい。

「才能」とは「人格」である

➡この言葉で、「多重人格」への理解が深まった気がします。

我々が、日々の仕事において、「一つの人格」だけを選んで処してしまう理由は、「そうした方が楽だから」なのです。いちいち場面や状況に応じて「人格」を切り替えていては「疲れる」からなのです。

➡裏表のない人間を演じることは、実は楽をしていただけだと知りました。
「精神のスタミナ」を鍛えていきます。

仕事において「優秀」という評価を得る人は、多くの場合、他のメンバーよりも「エゴ」が強く、「人から褒められたい」「周りから評価されたい」という意識が強い傾向があります。

➡思い当たります。

この厄介な「エゴ」に対して…

ただ、静かに見つめる

否定も肯定もせず、ただ、静かに見つめる

➡素晴らしい智慧です。

「引き受けの技法」「逆境観の転換」「解釈力」「シンクロニシティ:意味のある偶然の一致」

➡他責の壁 それは、今の私にとって昇りきれない大きな壁です

終話において、

ここまでの「7つの技法」での成長は、「始まり」にすぎない

と書かれています。

ネクストとして書かれている究極の技法については、

ご自身で読んで噛みしめていただきたいと思います。

くれぐれも7つの技法を踏まえた上で、終話に臨んでください。

さて、冒頭で私は、

「理想社会実現のための準備は整っているにも関わらず、

人間の弱さの故に、適正な“配分”がなされていない」と書きました。

また、最近の田坂氏の著作の主題が、人間の成長や心の世界に移行している

と指摘しました。

「7つの技法」と終話の究極の技法で以て

人間が可能性を十全に開花することこそが、

理想社会実現への近道なような気がしてきました。