95. 書評『深く考える力』

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社会医療人の星

最近、多くの人がブログやメルマガを書くようになっています。

実はこの文章を書くという行為が

深く考える力に結びつけられるとしたらどう思われるでしょうか?

また、会社や組織の中で、

斬新で洞察に満ちたアイディアを求められる事が多くなっています。

クリエイティブな成果を出さなければならない時に、

有効な技法があるとしたら、いかがでしょうか?

今週は、現代人に絶大なる効果をもたらす書を紹介しましょう。

ビジネススクール時代の恩師の最新著作です。

冒頭に書きましたが、

クリエイティブな仕事で勝負をしている方には必読だと思います。

この場合のクリエイティブは狭義の意味です。

神でない私たちがこれまでになかったものを創造することなんて出来ないのですから。

しかし、本書の内容を実践できるとするならば、

それに近い状態まで到達できるのかもしれません。

そんな可能性すら感じさせてくれる良書です。

私は、常々、世の中を良くするためのアイディアを考えています。

ある時はクラシックコンサートに行き、

その場と音楽の力を借りて、発想しようとしていますし、

自然の中に身を置きながら、突然の閃きが訪れるのを待ったりもしています。

ただ、時代の進歩が急速であるため、

私たちの頭脳をそれ以上にフル回転させなければならないと感じています。

簡単ではないと日々痛感もしています。

本書は、そんな私にとって、全く違った次元の技法を提示してくれました。

希望が見えてきました。

本書は三部構成です。

田坂ファンであれば、第二部、第三部の珠玉のエッセイは

暗記するくらいご存知でしょう(笑)。

ですから、今回は第一部に焦点を当ててみます。

(初めての方は、第一部の後に、第二部、第三部を味わってください。

第一部で語られている深い意味が理解できるはずです。)

この第一部こそ、多くの方に

先入観無しに、大切に、精読していただきたいです。

緻密に論理を積み上げていく「論理思考」は、思考の初歩的な段階に過ぎない。
「深く考える力」とは、心の奥底に眠る「賢明なもう一人の自分」の叡智を引き出す力。

ロジカルシンキング、「論理思考」が最高の思考だとは思わないでください。

必要なプロセスであるには違いありませんが、

そこから生み出されるアイディアは、陳腐でしかありません。

知的スタミナを駆使して「論理思考」を紡いでいくのですが、

アイディア出しのプロフェッショナルたちは

その先で勝負しているのだと思います。

また、「賢明なもう一人の自分」が、存在するはずがないなどと決して思わないでください。

居るのです。存在するのです。あなたの中に…。

我々の心の奥深くには、実は、人生で触れたすべての情報が記憶されている。しかし、我々の通常の思考では、それらの情報のごくわずかしか取り出すことができない。しかし、「賢明なもう一人の自分」は、それらの情報の中から、必要なものを、瞬時に取り出すことができる

実際、表面意識でのブレーンストーミングでは、どれほど考えても思い浮かばなかったエピソードや記憶が、「賢明なもう一人の自分」が動きだすと、心の深層から浮かび上がってくることは、しばしばある。

上記文章に本書のエッセンスが凝縮されていると思います。

まず、私たちの心の奥には、

これまでの体験の全てが記憶されているのだと信じる必要があります。

そして、私たちの生身の体験こそが、

どんなに素晴らしい他人からの受け売りの知識よりも

価値ある宝なのだと知らなければなりません。

さらに、「賢明なもう一人の自分」の存在を信じ、

実際に生み育てていかなければならないのです。

「賢明なもう一人の自分」を持つことは

私たちを正しい道に導き、

世の中全体を正しい方向に導く叡智をもたらすと信じます。

一方で、利己主義な精神、邪悪な魂には、

「賢明なもう一人の自分」は根付かないのだと思います。

私自身も、そのような「賢明なもう一人の自分」を見出し、

育てていく努力をしていくつもりです。

前半に「常々、世の中を良くするためのアイディアを考えています」と書きましたが、

理想社会の到来は、

「賢明なもう一人の自分」を持つ有意な人物を

如何に多く誕生させるかにかかっているような気がしてきました。

「これこそ、世の中を良くするための最高のアイディアではないのか?」と

「賢明なもう一人の自分」が、私に語るのでした。

2018年3月14日