204. 獨を慎む(ひとりをつつしむ)

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社会医療人の星

4月7日、安倍総理大臣から「緊急事態宣言」が出されました。

ここ数週間は外出自粛の要請が各自治体の首長から発せられていましたが、

繁華街を中心にそれが徹底されないと報道されていました。

新型コロナウイルス感染は日増しに広がっていますので、

理屈では外出を控えなければならないと分かっているはずです。

しかし、自分を厳しく律することが出来なければ

つい外出してしまうことになってしまいます。

欧米諸国のように厳格な外出禁止令が出されないと難しいのかもしれません。

ふと、「獨を慎む(ひとりをつつしむ):慎獨」という言葉が頭に浮かびました。

「君子は、必ず其の獨を慎むなり」

『大学』伝六章より

立派な人物というものは自分一人でいる時、

つまり他人が見ていない時でも

己をしっかりと律していくという意味です。

逆に、一人でいる時間を律するようになれば、

素晴らしい人間になれるということでもあります。

一人の時間に何をしているか?

この言葉にドキッとするのは、私だけではないでしょう。

他人の見ていないところでも己を律し、

有意義な時間を重ねていくことは大変に難しいといえます。

「慎獨」は、オタクの世界ではなく、

「足るを知る」世界だけでもないように思います。

極めて充足感に満ちた世界です。

別の表現をすれば、「孤独に強くなる」ということです。

米国・心理学者のアブラハム・マズローの欲求五段階説を知る人は多いと思います。

彼は、人間の欲求の最高段階を「自己実現」と名付けました。

それは、第4段階までの「他者からの承認」の欲求を超えた世界です。

他人の目や評価を基準にしない生き方でもあります。

まさに、「慎獨」の世界そのものです。

このメルマガ140話でも言及しましたが、

ロシアの文豪トルストイも未達を吐露しています。

140. マズローの欲求階層説とトルストイ
「自己実現」という言葉を目にする機会が多くなりました。 職業人のキャリア・アップも自己実現欲求に根ざすという意見も聞かれます。 ...

マズローのいうところの第五水準、

あるいは『大学』の「慎獨」のレベルは大変な境涯です。

そこに求められているのは、精神の成熟だと思います。

189. 成熟とは
2019年も残り1週間となりました。 至るところで、今年の総括が行われています。 新聞、テレビでも様々な切り口の総括を目にします...

「出来るけど、やらない」という自制の精神です。

今、待望の想いからか、アフターコロナの世界が語られ始めています。

一方で、「アフターコロナなんて、時期尚早!」という声も聞こえてきます。

「当面は、ウィズコロナを覚悟しなければならない」といいます。

確かにそうでしょう。

いずれにせよ、ビフォーコロナの生活には戻れないと思います。

今回の禍を機に、私たちは大きく生まれ変わるのだと信じます。

  • 「世界はひとつ」であると、身を以て理解すること
  • 「慎獨」という成熟の世界を獲得すること

ウィズコロナの長い試練の後に、

私たちは、この二つの新生を遂げるのだと思っています。

「緊急事態宣言」が出された今、

Stay home & Social distance の「慎獨」に取り組んでいきましょう!

(2020年4月8日)