実は私には著作があります。
ビジネススクールの修士論文を担当教授のご推挙によって
出版にまで漕ぎ着けることが出来ました。
8年以上が経過していますが、
内容は決して古くなってはいないと自負しています。
誰もAmazonに書評を書いてくれないので、
「だったら自分で書いてみよう」と思い立ちました(笑)。
医療費削減(お上は、適正化という表現をします)は
超高齢社会の重要なテーマです。
下図にあるように、日本中の病院に課せられている宿題は
「機能分化」と「連携」です。
この2つは、実は普遍的なテーマであり
アダム・スミスの時代から「分業」と「市場」という用語でも捉えられています。
『国富論』一編二章には、
「分業が交換の原因なのではなく、交換が分業の原因なのだ」と
市場の重要性が強調されています。
私たちは、「分業(機能分化)」と「市場(連携)」を比べた時に
前者が重要と考えがちですが、
「市場(連携)」の方をより重視すべきなのです。
さて、「機能分化」と「連携」の両者が重要であると認識してみると
欲張りな私は、両者を同時に叶える事はできないのだろうかと考えました。
そして、ある時、思い至ったのです。
「機能分化」と「連携」を同時に叶える概念が既にあったということを。
それがモジュール化です。
モジュールとは「交換可能な構成要素」で、
産業界では一時期、このモジュール化を使いこなせた企業が覇者となりました。
DELLコンピューターはその典型でしょう。
そのモジュール化の手法を医療界に応用するという大胆な提案です。
しかし、私が本書で強調したかったのは
モジュール化の限界です。
産業界ではモジュール化の研究が進み、数多の知見がありますが、
一方で、モジュール化の限界も研究されていました。
「コラボレーションの希薄化」と「総合知の欠如」です。
医療を適正に進化させるために、モジュール化の手法を利用するのは良いのですが、
「コラボレーションの希薄化」と「総合的判断力の欠如」への対策をしておかなければならないのです。
その時、浮かんでくるのが「チーム医療」の重要性です。
モジュール化の医療とチーム医療とは相互補完的であると考えます。
一般社団法人チーム医療フォーラムは
医療の推進を補完していくという意味の
真の「チーム医療」を目指さなければならないのです。
本書の医療進化論の一節を引用し、むすびとします。
人間にとって病を体験するとはどのような意味があるのだろう。この答えの無い問いへの不断の問いかけが、明日の医療のアーキテクチャを決していくのだという点を最後に強調しておきたい。