少し前に、国立新美術館のミュシャ展に行ってきました。
混雑を避けるため、金曜夕方(20:00まで開催)に行きました。
狙い通り、ゆったりと鑑賞できました。
さて、Alfons Muchaの発音ですが、ローマ字読みで「ムチャ」ではありません。
日本では、フランス語的に「ミュシャ」として通っていますが、
本来のチェコ語の発音は、「ムハ」が近いそうです。
そのため展覧会では「ムハ」と表記されていました。
よって、今回は「ムハ」で通したいと思います。
今回の目玉は、何と言っても「スラブ叙事詩 The Slav Epic」でしょう。
パリで大成功を收めたムハが、晩年は故郷に帰り
16年の歳月を費やして描き上げた渾身の作品です。
祖国チェコへの郷愁と民族の誇りを高揚するために描かれた作品でしたが、
1960年代以降、モラヴィアのモラフスキー・クルムロフ城にて
夏期のみ公開されていたものの、ほとんど人の目に触れることはなかったそうです。
その後、80年以上の時を経て
2012年5月、プラハ国立美術館にて全作品が公開されました。
会場では一部屋だけ写真撮影が許されています。
この絵を観てください。
ロシアから長旅を経て、聖アトラス山の教会にたどり着いた
民の姿を描いたものです。
画面中段に描かれた天使たちの姿が何とも神々しく、心が洗われます。
さらに、上段には教会天井に描かれた聖母マリアとキリストが
民を温かく見守っています。
こんな構図から、ムハの人間の気高さを信じ抜く、
優しい人間観が伝わってくるようです。
![聖アトラス山:The Holy Mount Athos](http://tunagaru.org/wp-content/uploads/2017/05/akiyama5001.png)
聖アトラス山:The Holy Mount Athos
![スラブ民族の賛歌 The Apotheosis of the Slavs](http://tunagaru.org/wp-content/uploads/2017/05/akiyama5002.png)
スラブ民族の賛歌 The Apotheosis of the Slavs
この絵も圧巻でした。
ムハの気高き精神が溢れ出ています。
観ているだけで勇気が湧いてきます。
気になる1枚がありました。
![ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師 Master Jan Hus preaching at the Bethlehem Chapel](http://tunagaru.org/wp-content/uploads/2017/05/akiyama5003.png)
ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師
Master Jan Hus preaching at the Bethlehem Chapel
フスと聞いて、遠い記憶が蘇りました。
![山川世界史 P.148 Jan Husの火刑](http://tunagaru.org/wp-content/uploads/2017/05/akiyama5004.png)
山川世界史 P.148 Jan Husの火刑
高校時代にこの挿絵をみて、
何とも言えぬ胸騒ぎがしたものです。
会場では、他にもフスの絵が2点展示されていました。
上のフス像には「公正 The Justice」の2文字が添えられています。
ムハは、この同郷の悲劇のリーダーに深い愛情と敬意を抱いていたのでしょう。
信念に生き抜く姿勢をフスから学んだのだと思います。
このような気骨のあるムハの最晩年が気になって調べてみました。
「スラブ叙事詩」によって民族の高揚を願ったムハは、
ナチス・ドイツに危険人物と見なされるようになりました。
「ムハの絵画は、国民の愛国心を刺激するものである」という理由から
ナチスは78歳のムハを厳しく尋問したそうです。
その後 釈放されたものの、4ヶ月後に体調を崩し他界しました。
言葉がありません。
ゴールデンウィーク中は、20:00まで開館しているようです。
ムハの魂を感じてみてください。