中央社会保険医療協議会(中医協)での医療技術評価(HTA)に関する議論により
2016 年度から薬価再算定への費用対効果評価の試行的導入が始まりました。
2019年度からはいよいよ本格導入の見通しだそうです。
医療技術評価(HTA)とは
「医療技術の利用に関する医学的・社会的・経済的・倫理的な問題についての情報を、システマティックに、透明性を持って、偏見なく、着実にまとめていく学際的なプロセスである」と定義されます(EUnetHTA)。
「患者中心の安全で効率的な医療政策を作るために情報を提供し、最良の価値を達成しようとする」ことが目的で、
「費用対効果評価」のみならず、「比較対象治療(薬)に対する相対的な有用性」や「社会的・倫理的価値」のすべてを含むものでとされています。
キーワードの「費用対効果評価」を考える前に
まず、QALY(質調整生存年:Quality-adjusted life year)について解説しておきます。
下図でいえば、斜線の面積となります。
具体的には患者Aの場合、青線グラフの積分値の25QALYsとなり、
患者Bの場合は、20QALYsとなります。
(http://www.crecon-ma.co.jp/essence)
誤解を恐れずに申し上げるなら、
患者Aのほうが患者Bより「よく生きた」という評価になるわけです。
さて、ここからが本題です。
1QALYを伸ばすために要するコストを
incremental cost-effectiveness ratio(ICER)と呼びます。
下のグラフの場合、新薬の既存薬に対するICERは
100万円/追加QALYsとなります。
(http://www.crecon-ma.co.jp/essence)
1QALYs上げるのにいくらまで費用を認めるのかが鍵なのです。
既存技術に対して、いくつかの新技術が下図のように分布するとしましょう。
するとそれぞれの新技術は、下図のような「◎」「⭕」「△」「☓」の評価になるのです。
費用効果的(cost-effective)と考えられるICERの限界値は、
例えば英国では3万ポンド、米国では5万ドルと考えられているようです。
日本円に換算すると500万円から600万円といったところです。
英国では国民保健サービス(NHS)内の英国国立医療技術評価機構(NICE)が
こうした医療技術評価(HTA)の手法でもって、
新薬や新技術の導入が決定されているのです。
これは、文字通りその国が考える国民のいのちの値段ということになります。
一人の病人が1年間、健康に生きるために
国が負担できる正直な金額といえます。
先に日本でも来年度から導入が検討されていると書きました。
日本の場合、一体いくらに設定されるのでしょうか?
透析患者一人にかかる医療費は年間約500万円といわれています。
となると、日本も英国と同様の値段になりそうです。
あるいは、もっと高い値段かもしれません。
今後、各国ごとにこのICER値が決められるようになれば、
これこそ、GDPに替わる、
豊かさの新しい指標になるような気がしています。
2018年6月20日