08.「「風光明媚な音楽~その1~」

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ツ・ナ・ガ・ル ハーモニー♪吉田貞夫

この原稿が印刷される頃は、夏も終わりに近づき、

もう秋を迎えようとしているころではないかと思います。

夏から秋にかけて、ピクニックに行かれる方もいるでしょうし、

紅葉狩りに行かれる方もいるかもしれません。

雄大な大自然を前に、心洗われるひとときを過ごす…、

すばらしいことですよね。

しかしながら、この業界には、毎日忙しくて、休みもとれない…(泣)

という方も少なくないはず。

今回は、休みが取れなくても大自然の美しい風景を満喫できそうな、

風光明媚な趣きをもったクラシック音楽作品をご紹介してみたいと思います。

束の間のひととき、癒されてくださいね。

まずご紹介したいのは、ブルックナーの交響曲第4番『ロマンティック』の第3楽章です。

深い森に響き渡るようなホルン、オーケストラ全奏の雄大な響き、

大自然に囲まれているような開放感を感じませんか?

ブルックナーの作品には、森とか、山々とか、

霧といった自然を連想させる部分が多く見られます。

この曲の第1楽章 の冒頭でも、神秘的な霧のなかから、

朝日に照らし出された山々が出現するような壮大な音楽が奏でられます。


続いてご紹介したいのが、ブラームスのピアノ協奏曲第2番(03)です。

冒頭、ホルンとピアノの掛け合いが、とてもすがすがしいんです。

ホルンのソロ、まるで青々とした山並みを眺めるような気分にさせられます。

続くピアノは、広々とした湖の水面の揺らぎを連想させます。

ブラームスが、山あいや湖畔の避暑地で作曲することが多かったということにも

関連しているかもしれませんね。

やがて、穏やかに木管楽器と弦楽器が加わり、ピアノの長いソロに続いて、

オーケストラ全体で、力強く第1主題が演奏されます。

この第1主題、まさに雄大な大自然の風景を彷彿とさせませんか?

映画などで、カメラが、近景から一気に遠景に引いていくようなスケール感。

喩えるなら、『アバター』で、主人公が空を飛ぶ恐竜?に乗って飛び立った瞬間、

雄大なパノラマが広がるような、そんな感覚です。

ブラームスには、もうひとつ自然の風景を思い起こさせる作品があります。

交響曲第2番です。

この曲でも、冒頭、ホルンと木管楽器が活躍します。

豊かな緑にかこまれた湖、穏やかな水面の様子などが浮かびませんか?

ブラームスの交響曲第2番と兄弟と呼んでもいい作品が、

ドヴォルジャークの交響曲第6番です。

冒頭のメロディー、豊かな自然と水面の揺らぎを感じさせます。

明るい日射しと、ワクワク感、

そして、チェコの風土へのドヴォルジャークの強い愛情が感じられます。

この交響曲第6番は、ドヴォルジャークが古典的な形式で書いた最後の交響曲です。

続く第7番は叙事詩的な内容、第8番も楽器の扱いや構成が斬新ですし、

第9番は、『新世界から』という副題の通り、

アメリカの黒人霊歌やインディアンのメロディーにインスピレーションを受けています。

そういう意味では、この第6番は、あまり一般的な知名度はないかもしれませんが、

ドヴォルジャークのチェコ時代の集大成とも呼べる重要な作品

といっていいかもしれませんね。

風光明媚な音楽として、忘れてはいけないのが、ワーグナーの楽劇で有名なシーンの一つ、『夜明けとジークフリートのラインへの旅』です。

この部分は、オーケストラ版に編曲され、コンサートなどでもよく演奏されます。

最後に、変わり種をひとつご紹介してみましょう。

サン・サーンスのピアノ協奏曲第5番『エジプト風』です。

サン・サーンスが実際にエジプトに旅行中に書かれた作品で、第1楽章や、

第3楽章では、船旅のワクワクしたふんいきや、次々と移り変わる景色と異国情緒、旅先での楽しい思い出などが織り込まれます。

第2楽章(09) では、ナイル川クルーズで聴いた

『ヌビアの愛の歌』が引用されているそうです。

この作品は、帰国後、サン・サーンスの音楽活動50周年を祝うコンサートで、

サン・サーンス自身のピアノで演奏されたそうです。

きっと、私たちが旅先で撮った写真を見せびらかすときのように、

得意満面だったことでしょうね。

このほかにも、いつか機会があれば、

北欧の作曲家たちによる風光明媚な作品についても書いてみたいと思います。

次回は、ワインの話題。ワインの作り方と味わいの関係について書いてみます。

※掲載内容は連載当時(2012年9月)の内容です。