2016年診療報酬改定、みなさんはどう感じましたか?
現場はいろいろ大変ですよね。
私が、声をあげるほど嬉しかったのは、
「退院調整加算」から、「退院支援加算」と名称変更になった事、
そして、病棟配置の退院支援者を評価していることです。
そして、入院日数による点数差を外しましたね。
これは本当に良かったです。
某大学病院では、入院患者全員に「退院支援計画書」を立案し、
退院調整部門の担当者が患者・家族に提示し、
14日以内の一番点数の高い「退院調整加算」を多く請求していました。
「本当に退院支援が必要な患者さんに、退院調整部門が忙しすぎて、関わってもらえない」
ある研修会場で、その大学病院の病棟ナースから相談があって、私はその事実を知りました。
病院で退院支援を提供する事を目指し、
診療報酬にも多少なりとも影響を与える活動をしてきた私にとって、
心がえぐられるくやしさを感じました。
ここまでひどくなくても、
病院内で作られた「退院支援フロー図」や「退院支援マニュアル」をみると、
診療報酬請求のためのルールがかかれていて、
患者にどのような支援を提供するのか、
結果患者が、どうなる事を目指すのかが見えないフローが多い。
独立後、食べていくために(これは重要)、単発の講演をたくさん受けていたが、
たった90分の講義で変わるものではない。
せっかく呼んでもらっても変革を起こすまでに入っていないと感じ始め、
「問題解決」や「ファシリテーション」関連のビジネス本からお勉強。
今は、病院からの講演依頼が入った時や、アドバイザーとして継続サポートに入る場合、
今どのようなシステムになっているのか、
現状の把握とその現状を看護管理者や退院調整看護師はどう受け止めているのかを、
「アクションミーティング」と称して、議論する時間を必ず持つようにしている。
看護部長には、こんな質問から始まる。
・退院支援=意思決定支援・自立支援の過程と、退院調整=在宅療養コーディネートの過程が、看護管理者は理解していますか?
・退院調整看護師・MSWは、地域の保健・医療・福祉機関との連携はできているといえますか?
・目指す姿は何ですか? 現場の看護師にどんな看護をさせたいですか?
いきなりメールや電話のやり取りの中で、こんなこと聞かれたら、
びっくりされることも多いけど、この議論の過程が重要だと思っている。
地域連携室にいる看護師が、前方連携と空床管理(ベッドコントロール)に主に関わり、
後方連携(退院調整)はMSWが取り組んでいる病院もいまだに多く、
その場合、看護部としての取り組みにはなっていない。
看護管理者は、地域連携室にヒヤリングにいったり、
同法人の訪問看護ステーションやケアマネジャーの事業所に、
「地域から見た病院の退院支援」について現状を聴き取りに行って、
2回目の打ち合わせでは、
「退院調整の前の段階の問題が多い事がわかりました」と話してくださることが多い。
都道府県看護協会研修会で、退院調整看護師の実践報告で聞いて嬉しかったお話。
すでに、在宅支援チームが関わっている療養者や、
自宅に替わる住まいの場から入院された場合、
病院医師からの病状説明・方向性を検討する場面(多職種カンファ)に、
必ず在宅支援者が同席するというゆるいルールがある。
ケアマネジャーだったり、診療所の看護師だったり、既にその方に関わっている専門職が、
患者・家族と一緒に話しを聞いて、目指す姿の共有をする場になっている。
病院側だけではなく、在宅支援者も「入院したら必ず教えてください」と、
最初の契約時は勿論、普段から、療養者や家族に話して、
入院時の連携・情報共有についても同意を取っている。
この「多職種カンファレンス」が、入院して1週間以内に行われると、
治療後の見通しもある程度可能になるので、
退院に向けて必要な準備も、この時点で進める事もできる。
この後、大きな変化がなければ、退院前に再度カンファは不要になると。
困難事例に関して、「地域ケア会議」として関係者が集まったり、
ADLが大きく変化した場合は、「退院前自宅訪問」という形で
丁寧に「病院から暮らしの場へバトン」を渡す事を実践している。
地域で、唯一の急性期病院として、
「この地域の医療を守るためにも、在宅移行支援は重要な病院の役割である」と
病院一丸となって取り組んで来たそうだ。
地域ケア会議や自宅訪問時には、専門職だけではなく民生委員やご近所さん、
消防の人たちも集まって、本人を真ん中に話し合いをする。いいですね。
地域みんなで、地域まるごとケア(これは永源寺の花戸先生の言葉)が広がる。
そろそろ、「病院発信の退院支援」から、
「地域発信の在宅療養支援」に進化させていきたいな。