05.「状態像ごとの在宅療養移行支援を体系化する 経験値を可視化する 在宅・病院協働で創造していく

おうちへ帰ろう 宇都宮宏子

入院した患者さんが、どんな医療を受けて(入院目的・治療方針)、

どういう状態像になるかを早期に看護チームで共有する。

入院前の生活ぶり(ADL、IADL)と比べて変わる事はないかを考え、

患者さんが望む暮らしの場へ帰る事が可能になる備えをする。
病棟看護師と週に1回、集まりカンファレンスを始めた。

退院支援カンファレンスだ。

規模の大きい病院になると病棟の特徴がある。

座学の全体研修では特徴を踏まえた教育ができない。

オンゴーイングの患者さんを通して「気づき、思考し、行動するプロセス」を学ぶのは、

現場のカンファレンスが効果的だと考え、熱心に退院支援に取り組んでいる部署で始めた。

意識の高い部署は対象者が多く発生する病棟であること。

それに私一人がスーパーサイヤ人になって動いても現場は変わらない。

病棟看護師の力を引出し、自立して退院支援ができるようにサポートする事が目的だ。

診療科、主に診る病気によって退院支援が必要な患者の状態像が違い、

マネジメントするプロセスにも特徴がある。

手順、業務マニュアルといった質を保障する標準化は、病院や介護現場でも作成され、

手順に沿った看護、ケアを提供する事を目指す。

しかし、退院支援、退院調整のプロセスは、情報からどう考えるか、

どう動くかといったマネジメントのプロセスになる。
脳外科病棟では、毎週病棟医長が日勤看護師に対して、

手術予定患者の紹介と術後管理等をプレゼンする時間に、私が参加して開始した。

既存のカンファで「どこへ帰るのかな、そのために準備が必要だね」を

ちょっと意識する働きかけをする。

若い膠芽腫の男性、治療方針と部位の問題から、腫瘍をすべて除去できない事が説明された。

病棟師長達は術後ICU経由しないで病棟管理になるため、

人員体制の帰室時間の確認などをしていた。

私は外来カルテの最初の記録を読む。

会社で仕事のミス、道に迷うといったことが続き、

「認知症ではないか」と会社の人に言われて家族と受診した経緯が書かれていた。

まだ幼い子供がいて妻は専業主婦だ。

「全部除去できないという事は高次脳機能障害は残りますか?」と医師に確認した。

「会社復帰は厳しいのかな、機能障害はなくても生活動作は自立できるのかな」といった、

“治療後の状態像”についての予想を問う。

医師にとっては嫌な質問。

今から頑張って治療しようとしているんだもんね。

「経過見ないとわからないけど職場復帰は厳しいかな」

「そうすると、経済的な問題が大きいかもね。奥さんが不安を抱えているかもしれないし、

今後の生活の相談という事で思いを聴いていく必要があるね。

術後の状況みて、OT(作業療法士)に高次脳機能評価を依頼して、

MSWと一緒に奥さんとの面談を設定しましょう」と支援を皆で考え、計画する。
患者や家族が抱えている不安や思いに寄り添いながら、

治療やリハビリの経過を見て、必要な支援、調整をしていく。

皆に質問する内容(支援に必要な情報)、治療経過に合わせてマネジメントする事、

在宅への調整も含め、病棟、患者状態像によって一定のパターンがある事に気づいた。

在宅療養への移行を支援するためのプロセスを見える化、可視化する事ができる。

2011年に京都府看護協会で『在宅療養移行支援ガイド~医療依存度の高い患者を中心に~』という冊子を作成した。

京都府下の退院調整看護師が集まり、先駆者の経験値を可視化する作業だ。

訪問看護師や医師会とも相談しながら、

京都での在宅療養移行の質を保障するためのテキスト、ガイドブックとして完成させた。

2013年、東京都では「退院支援マニュアル~病院から住み慣れた地域へ、安心した生活が送れるために~」を部会長として関わり、

東京で在宅や退院支援に取り組む先駆者たちと共に作成した。

実践者の経験、成功体験を地域全体の財産として活かすために、

関係者が集まり、現状を語り、どうありたいか、目指す姿を共有し創造していく。

東京都での部会では「私が受けたい支援、当事者目線で、受けたい支援、調整」を

まず部会全体で共有する事に集中した。

「退院支援・退院調整フロー図」は可視化したもの。

その中で必要な知識やツールを丁寧に作る作業へと発展していった。

ぜひ、東京都のみならず多くの病院で、地域協働で活用してほしい。

マニュアルは東京都保険福祉局のホームページからダウンロードが可能。

成果物を作る事ももちろん大事だけど、

作るまでの過程とその後どう現場で活かすかが何より重要だ。

今年は実践、評価へと事業は続く。

その先に患者さんの笑顔があると信じて頑張って欲しい。

※掲載内容は連載当時(2014年8月)の内容です。