12.「グレート・ギャツビー」

山中英治 文学? 散歩
「グレート・ギャツビー」 フィツジェラルド

「グレート・ギャツビー」
フィツジェラルド

この原稿の締め切りが5月中旬ですから、予告編しか観ていないのですが、

「華麗なるギャツビー」が、レオナルド・ディカプリオの主演で5度目の映画化がされました。

豪華絢爛な場面が多いので、映画にすると見応えがあるのもありますが、

フィツジェラルドの代表作であり、アメリカ文学を代表する名作で、

ストーリー展開も面白いので何度も映画化されているのだと思われます。

小説はギャツビーの大邸宅の隣に引っ越してきたニックという若者を語り手に紹介されます。

「僕がまだ傷付きやすい若かりし頃に」父親から「誰かを非難したくなった時には」

「世間の人々がみんなお前のように恵まれているわけではないのだということを思い出しなさい」と忠告されたので、

「あらゆる断定的な判断を保留する」(つまり優柔不断に? 寛容になった?)

「その習慣のせいで多くの珍しい性格の人とも知り合いになり、きわめて退屈なやつらの餌食にもなった」という書き出しからして、

偽善? に対する皮肉たっぷりです。

ギャツビー邸では連日連夜豪華なパーティーが開催され、多くの客で賑わっています。

実はこれが対岸の屋敷に住む昔の恋人で、今は人妻のデイジーの気を引くために行っているのですから、なんと廻りくどいやり方でしょう。

デイジーは美貌の令嬢でしたが、実は金持ちや名声に弱いという設定です。

この時代の金持ちの娘は、金持ちと結婚しなければ幸せになれない境遇がほとんどでしたし、

そのように親から躾けられていたでしょうから、まあ致し方ありません。

当然、豪華絢爛は大好きです。

現状よりもっと大金持ちで素敵な男が自分を娶ってくれて、

もっと贅沢な暮しができるならそちらになびきます。

ギャツビーは青年将校の頃にデイジーと出会い、恋に落ちましたが折からの第一次世界大戦で二人は引き離され、彼が従軍している数年の間にデイジーは富豪と見合い結婚をしてしまいます。

復員後に商売で大成功を収めたギャツビーが、自分の青春を賭して愛したかつての恋人を取り戻そうとするのです。

ニックの仲介でギャツビーの邸宅で二人は再会し、デイジーは立派になったギャツビーと豪奢な雰囲気に心を奪われます。

彼は大きな洋服ダンスを開けて、色とりどりのワイシャツを取り出して投げます。

テーブル一面に豪奢なシャツの山が築かれていくと、突然デイジーはワイシャツの山に顔を埋めて「なんて綺麗なワイシャツなんでしょう」「なんだか、悲しくなるわ、こんなに綺麗なワイシャツ、見たことないんですもの」と泣きました。

彼が彼女を取り戻すために必死になっていること、彼女がその気持ちに感動していることを上手に表現した描写です。

1974年のロバート・レッドフォード主演の映画が、レッドフォードの格好良さもあって本邦でも人気作品です。

この作品では再会の場面で当惑するギャツビーに対し、デイジーが彼に昔の軍服を着させ、ローソクを1本床に立てて、思い出のワルツを踊りましょうと誘うシーンがあります。

”Let’s be foolish. Put on your uniform and we’ll turn out all the lights… except for a single candle. And I’ll let you tell me… you love me.”

「愛してるって言わせて見せるから」ですよ。

こわいですね、したたかですね、感情の赴くままですね。

この後ストーリーがどう展開して結末がどうなるかは、

映画を観るなり原作を読んで頂ければと思いますが、今年の映画も楽しみです。

“Whenever you feel like criticizing anyone,”

“just remember that all the people in this world haven’t had the advantage that you’ve had”

というのは親としては間違いのない教えだと思いますが、

確かに切るべきものは切らないと面倒な人生になることもありますね。

ところで、どうでもいいことですが、

私愛用の寝ぐせ直しスプレーは、

マンダムのギャツビーです。

※掲載内容は連載当時(2013年6月)の内容です。