悠翔会 佐々木 淳 理事長が主催する
在宅医療カレッジ特別企画に行ってきました。
ラウンドテーブルディスカッションのテーマは
〔自立支援を通じて考える超高齢社会と地域のカタチ〕でした。
ところで、自立支援のインセンティブって何?
興味深く参加させていただきました。
佐々木先生を含む8人の論客によるラウンドテーブルディスカッションでした。
ご覧の通り錚々たるメンバーです。
- 浅川澄一 ジャーナリスト(元日本経済新聞編集委員)
- 唐澤 剛 内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部 地方創生総括官
- 西村周三 医療経済研究機構所長/前国立社会保障・人口問題研究所所長
- 前田隆行 NPO法人町田つながりの開 理事長/デイサービス「DAYZ BLG」運営
- 三輪恭子 よどきり医療と介護のまちづくり株式会社 取締役/看護師
- 森 剛士 株式会社ポラリス 代表取締役/医師
- 山崎 亮 コミュニティ・デザイナー/Studio L代表
- 佐々木 淳 医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長/医師
まず、今回のテーマの背景には、第145回社会保障審議会介護給付費分科会(2017年8月23日)の議論があると思われます。
所謂、高齢者の自立支援における「インセンティブ改革」です。
厚労省参考資料の抜粋です。
「介護サービスの質の評価・自立支援に向けた事業者へのインセンティブ」P.17
上段の問題提起が重要です。
下段の竹内氏の「要介護者の約半数ぐらいは、半減ぐらいはできそうだ」
の発言にも驚かされました。自立支援の可能性を感じました。
現在の仕組みでは、サービス利用者の要介護度が軽くなるほど報酬が低くなるため、
各事業所では自立支援に後ろ向きになりかねません。
自立支援を一生懸命やって結果が出れば出るほど、事業所収入は下がることになります。
そこで見直し案として、
心身機能の訓練などによって要介護度が改善したり、
排せつや着替えなど日常生活動作ができるようになったりした場合、
報酬を増やすというインセンティブを与えようとの検討がされているのです。
ただ、実際の介護の現場では、
家族も事業所も介護度が上がることを歓迎する傾向が根強くあるようです。
介護度が上がれば利用できる介護が増え、
家族は楽になり、事業所は収益が増えるからです。
費用のかかる要介護度の重い人を減らすことで
全体の費用抑制を意図しているのでしょうが、
事業所への成功報酬が少ない場合には上手く機能しないと思います。
このプライシングがかなり難しいような気がします。
極論を言えば、費用抑制と同額の成功報酬を充てがわないと機能しないという事態も
考えておかなければなりません。
また、状態の改善が見込めない要介護者を事業者が排除するという
悪しき選別が起きないような対策も必要でしょう。
いずれにせよ、この制度設計には相当な智慧の投入と試行錯誤が求められると思います。
ディスカッションでは、様々な意見が出されました。
中でも、株式会社ポラリス代表取締役の森 剛士医師のお話には、強い希望を感じました。
自立支援の取り組みを本気で行うと
本当に介護度が下がって介護費用は削減できるというのです。
それを事業化しているのですから、素晴らしいです。
患者自身の意志尊重という話題も出されましたし、
患者本人の意志も常に正しいとは限らないという鋭い意見も出ました。
賢い市民というキーワードも出されました。
Studio L代表の山崎 亮さんの「時間をかける」という指摘にも感服しました。
私の場合、医療従事者以外の論客の意見が新鮮でなりませんでした。
医療の枠の中でのみ、物事を考えてしまっているのかもしれません。
こういう場に来るとそう感じることが多いです。
全体を通し、『自立支援』を再定義しようという
佐々木先生の強い意気込みを感じました。
素晴らしいイベントに感謝します。
有り難うございました。
追伸:
このようなイベントがあると
参加できなかった人から概要を説明してというリクエストをいただくことがあります。
しかし、それは無理というものです。
講義ではない今回のようなディスカッションでは、尚更です。
個人によって探っているテーマが違いますから、キャッチする知識も違ってきます。
素晴らしい論客が吐露する様々な智慧への反応も人様々でしょう。
場の力が思わぬ発想をもたらしてくれたりもします。
実際に参加しなければ得るべきものはないと心得るべきでしょう。
知識は書籍やネットで得られるでしょうが、
このようなイベントで獲得すべきは
“創発の世界”なのですから…。
2017年12月13日