184. 『ウォーキングの科学』書評

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社会医療人の星

メディカルウォーキング(医歩)は、

信州大学の能勢博教授(現在、特任教授)の「インターバル速歩」を取り入れています。

インターバル速歩とは、本人がややきついと感じる早歩きと、

ゆっくり歩きを3分間ずつ交互に繰り返すという歩き方です。

今回、クラウドファンディングの成功を成就させるために

そもそもの原点に返るつもりで、

能勢教授著の『ウォーキングの科学』を精読してみました。

講談社・ブルーバックスから10月20日に出版されたばかりです。

副題は、「10歳若返る、本当に効果的な歩き方」となっています。

正しく、副題の通り、最も効果的な歩き方なのだと思います。

そもそも体力とは何か?

大きく、持久力と筋力に分けられますが、

ミトコンドリアの働きなど細胞レベルの話も交えて

そもそもの体力について解説されています。

運動時のエネルギー供給源は

「クレアチンリン酸系」「解糖系(嫌気的代謝系)」「好気的代謝系(有酸素系)」です。

解糖系で発生した乳酸は乳酸イオンと水素イオンに一部分離し、

この水素イオンが細胞内のpHを低下させ筋収縮を阻害するのと同時に、

筋細胞表面に分布する受容器を介して痛みを感じさせるのだそうです。

これが筋肉痛の原因です。

また、この時の乳酸イオンは、肝でコリ回路によって

ブドウ糖に再生成されると考えられている訳ですが、

肝に限らず心筋繊維や骨格筋の遅筋繊維で

直接エネルギー源として効率的に利用されるというラクテート・シャトル説についても知ることが出来ました。

「最高酸素消費量(VO2 max)」の解説も分かりやすかったです。

VO2 maxの一般的な測定法としては、

トレッドミルや自転車エルゴメータを使用して段階的に負荷を上げていき呼吸量・酸素・二酸化炭素の量を計測します。

負荷を上げていっても酸素消費量が変化しなくなったときが最大酸素摂取量となります。被験者は体力の限界に挑戦しなければならないので大変です。

これを「3段階ステップアップ歩行」という負担の少ない測定法で代替できることも述べられています。

これはトレッドミルや自転車エルゴメータを使わない方法なので、

巷で科学的な検証をするのには大変有用だと思います。

持久性トレーニングで乳酸閾値以上の負荷運動を行うと、

血液量の増加や一回心拍出量の増加が起こり、

筋肉内での酸素利用速度の亢進と相まってVO2 maxを増加させるのです。

インターバル速歩の早歩きにVO2 maxの60%以上の強度が要求されている理由です。

ミトコンドリア機能の向上が重要なのです。

結局、「運動形態を問わず」VO2 maxの60%の強度を目標にした運動を、

30分/日、3~4日/週、3~6ヶ月間行うと「年齢、性別、初期体力に関係なく」、

VO2 maxが初期値に比べ10~20%向上することが明らかになっているそうです(56)。

読了後、医歩普及への意欲が倍増したことは言うまでもありません。

能勢教授も強調していますが、

ウォーキングは高額な設備や道具が必要ではなく、

気軽に始められ継続しやすいというメリットがあります。

それだけに広く普及できる可能性があると思います。

正しく行えば、多くの人を幸福にしていくはずです。

という訳で、残り5日のクラウドファンディング

皆様のご支援を宜しくお願い致します。

2019年11月20日