14.運動が脳にも良い理由-神経栄養因子

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社会医療人の星

私はメディカル・ウォーキングを通して

高齢者のサルコペニア予防を呼びかけています。

平均寿命と健康寿命との間には、

日本人男性で9年、女性で12年のギャップが有ります。

男女ともに約10年が医療や介護のお世話にならなければならない期間であり

「人生ラスト10年問題」と名づけて問題提起をしています。

これは超高齢社会を迎えた日本のビッグ・イシューとなることでしょう。

この期間には3つの節目があると見ています。

  1. 歩けなくなる時
  2. 食べられなくなる時
  3. 認知できなくなる時

1と2に関して、栄養と運動により筋肉を減らさないことが大切である

という確かなエビデンスがあります。

3に関しては、いくつかのエビデンスがありますが、

正直、自分でも今ひとつ納得感が得られていませんでした。

さて、BDNFをご存知でしょうか?

Brain-derived neurotrophic factorの略であり、

日本語では脳由来神経栄養因子と表記されます。

神経細胞の維持に必須のタンパク質ですが、

運動によって増加することが分かっています。

その代表的な効果を挙げてみます。

  1. 記憶、学習の促進
  2. 情動のコントロール:うつ病予防
  3. 神経細胞死の阻止:認知症予防
  4. 食欲抑制

以上を平たく表現すると、BDNFは脳のアンチエイジング物質

と言えるのではないかと思います。

4の食欲抑制に関しては、過食、摂食行動異常のあるマウスにBDNFを投与すると、

摂食行動異常が改善し食欲が抑制されることが分かっています。

私は特に、3の神経細胞死の阻止効果に興味を持っています。

アルツハイマー病は、アミロイドβによる神経細胞の死滅が原因ですが、

BDNFの投与によって神経細胞死が抑制されることが分かってきました。

運動によってBDNFが増加することで

認知症の予防につながると予想されるのです。

すなわち、人生ラスト10年の3つ目の節目の認知症に関して

運動による予防効果が期待できるのです。

BDNFの登場によって、運動が脳にも良いことが十分に納得できました。

medicalwalking

運動によって成長ホルモンが増加する点は、皆さんご存知だと思います。

成長ホルモンには身体のアンチエイジング効果があります。

すなわち、成長ホルモンは身体のアンチエイジング物質と私は考えています。

以下、効果を列記します。

  1. 疲労回復:細胞修復
  2. NK細胞の増加:免疫力向上
  3. メラトニン分泌:良眠
  4. 脂肪分解:肥満抑制

これらの成長ホルモンの効果を知る時、

疲れている時ほど運動したほうが良いことが分かります。

以上をまとめると、

運動は、成長ホルモンの増加によって身体のアンチエイジング効果を

BDNFによって脳のアンチエイジング効果をもたらすのです。

高齢であればあるほど、運動が大切なのです。

栄養と運動の両面を重視したメディカル・ウォーキングは

超高齢社会において、今後、益々、重要性が高まることでしょう。