202. スモールワールド現象

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社会医療人の星

知り合い関係を芋蔓式に辿っていけば

比較的簡単に世界中の誰にでも行きつくという仮説があります。

日本語の「世間は狭い」という表現も同様の生活感覚でしょう。

スモールワールドに関しては、

1967年の社会心理学者スタンレー・ミルグラムの実験が有名です。

1967年の社会心理学者スタンレー・ミルグラムの実験

実験内容を具体的に説明しましょう。

アメリカ合衆国国民から二人ずつの組を無作為に抽出し、

平均すると6人の知り合いを介してその二人が繋がっていることを実際に示しました。

その後、ウェブの世界も6アクセス以内ですべて連動しており、

企業もその取り引き先を辿れば

世界中の企業が六次以内で繋がっていることが確認されました。

ということは世界中の人間が6人以内で完全に繋がっているということでもあるのです。

すなわち、今、日本に住んでいる私が、知り合いを辿っていくと

6人以内を介して、トランプ大統領にも繋がるということなのです。

凄くないですか?

この6という数字が注目され、「六次の隔たり」という用語が知られるようになりました。

The Six Degrees of Separation theory といいます。

したがって、世界はたった六次の隔たりで

あらゆるものが繋がっていると捉えられるようになったのです。

驚くべきことに、殆どの場合、6ギリギリではなく、

3~4次の隔たりで済んでしまうそうです。

世界はあらゆる分野、あらゆるシーンでスモールワールド化しているのです。

このスモールワールド化を促進しているのが、

ITでありWebである点は誰もが納得するはずです。

ムーアの法則を持ち出すまでもなく、

世界は益々、スモールワールド化していくでしょう。

それは、相互に影響を受けやすくなったことを意味しています。

ネットワーク理論によれば、「弱い紐帯」が重要な働きを為すのだそうです。

ネットワークにおいて「強い紐帯」が重要と考えがちですが、

スモールワールド現象を支えているのは、むしろ「弱い紐帯」であるといいます。

この概念を「弱い紐帯の強み」(”The Strength of Weak Ties”)といいます。

「強い紐帯」という親密な人間関係を維持するには多大なエネルギーが必要です。

しかし、1,2度会っただけの知り合い(「弱い紐帯」に該当)という関係は、

いざというときに連絡が取り合えるだけの関係性ですから

その維持には左程のエネルギーは必要ありません。

「軽い接触」程度の関係性です。

この「軽い接触」「弱い紐帯」がスモールワールド化するネットワークにおいては重要なのです。

*ムーアの法則:CPU性能18ヶ月で2倍になるという法則(インテル社創設者のひとりであるゴードン・ムーア博士 が提唱)

*弱い紐帯の強み:マーク・グラノヴェッター (Mark Granovetter) スタンフォード大学社会学部教授が弱い紐帯こそネットワークにおいて重要であり強みを発揮すると提唱した。

さて、「軽い接触」と聞いて何か思い浮かびませんか?

そうです。

今、世界中に大混乱をもたらしている新型コロナウィルスの「接触感染」です。

この新型ウィルスは、付着物上で比較的長く生存するようだと指摘されています。

この性質こそ、「弱い紐帯の強み」となって、

これだけ大きな被害をもたらす原因になっているのだと思います。

(勿論、重要化した場合の致死率の高さも影響していることは言うまでもありません。)

新型コロナウィルスの「弱い紐帯の強み」が

全世界をしてスモールワールド化させているのではないでしょうか。

「弱い紐帯」が原因となっているため、今後数ヶ月で終息に向かうとはとうてい思えません。

長期戦を覚悟しなければならないでしょう。

そして、この戦いは私たちのライフスタイルを

根底から変えさせるに違いありません。

あらゆる集会、ショービジネス、スポーツ観戦、旅行のスタイルが

変更を余儀なくされるのだと思います。

人とつながり、交易しようとする性向が、

現生人類 ホモ・サピエンスの今日の繁栄を生んだと私は確信しています。

ですから、「強い紐帯」にせよ、「弱い紐帯」にせよ

人と人とのつながりを全否定してはいけません。

要は、ソーシャル ディスタンス(社会的距離)が大切なのです。

ソーシャル ディスタンスとは、

誰が新型コロナウィルスに感染しているか目に見えないので、

ウィルスを他人にうつさない・他人からうつされないために

他人とは物理的な距離を保つということです。

その距離は具体的には1.5~2メートルと言われています。

この動画を見れば、一発で理解できるはずです。

新しいライススタイルを考える際にも

適切なソーシャル ディスタンスを私たちは見出していかなければならないのでしょう。

長くなってしまいました。

まとめに入ります。

新型コロナウィルスの経験から私たちが学ぶべきことは、

この世界が完全に繋がっている事実なのだと思います。

世界規模での今回の過酷な体験は、全人類は運命共同体であることを教えています。

気候温暖化による自然災害の頻発、甚大化でもそれをひしひしと感じさせられます。

今回の新型コロナウィルス感染拡大は、気候温暖化には直接、関係していないと思われます。

私が恐れるのは、

気候温暖化によって引き起こされる感染症のパンデミックです。

その時こそ、人類にとって相当に厳しい状況が突きつけられるのだと思っています。

新型コロナウィルス感染拡大において、

トランプ大統領と中国が激しく非難し合っています。

既にスモールワールド化している今、人類は一つの運命共同体、生命体です。

とすれば、非難し合っている構図は、

一人の人間の右手が左手に文句を言っている滑稽な姿に思えて仕方がありません。

人類全体が新たな次元に移行できるかが問われているのだと思います。

(2020年3月25日)