「カタルーニャ独立宣言」のニュースが世界中を駆け巡りました。
カタルーニャといえば多くの芸術家を産んだ気骨のある民族と私は認識しています。
実際の独立は難しいのかもしれませんが、
稀代のチェロ奏者 パブロ・カザルスの国連本部での演説(演奏)を思い出しました。
そして、それが頭から離れなくなりました。
という訳で、今週はカザルスについて書いてみます。
2017年10月27日、スペイン北東部カタルーニャ(Catalonia)自治州議会は
同州の独立宣言を賛成多数で可決しました。
一方、中央政府は即座に同州独立を阻む対抗措置に乗り出し、
プッチダモン・前カタルーニャ自治州首相と州の元幹部ら計5人が指名手配されました。
彼らは亡命先のベルギーの司法当局に身柄を拘束されながらも、
11/6には釈放されています。
日々刻々と事態が変動しています。
中央政府によって議会が解散されたカタルーニャ州では12/21に選挙が予定されています
プッチダモン氏も立候補するはずですので、今後も目が離せません。
さて、カタルーニャ(英語読みでは、カタロニア)について少し解説をしておきます。
カタルーニャは、中世以降、商業国家として栄えた歴史を持ちます。
大国フランス、スペインに挟まれながらも、
周辺諸国との連合により賢く立ち回ってきた民族です。
自らの才覚で独自の文化圏を築いてきた自負があるため、
カタルーニャ人としての強い民族意識を有してきたのだと思います。
フランコ独裁政権下ではカタルーニャ語の使用が禁じられ、
多くの有識者が投獄、処刑されました。
圧政下にあって、彼らは芸術分野で反骨の精神を発揮しました。
ピカソ、ダリ、ミロはいずれもカタルーニャ出身の画家です。
アントニオ・ガウディもカタルーニャ出身の建築家で、
カルターニャ自治州バルセロナに
サグラダ・ファミリア(聖家族教会)などの作品群を設計しています。
何と個性豊かな芸塾家を多数排出していることでしょう。
「カルターニャ独立宣言」のニュースを聴いて私の頭に真っ先に浮かんだのは
それらの芸術家ではなく、カザルス(Pablo Casals 1876-1973)です。
カザルスも勿論、カタルーニャの出身です。
バッハの『無伴奏チェロ組曲』(全6曲)の価値を再発見し、
広く紹介したことでも知られていますが、
1971年10月24日のニューヨーク国連本部での『鳥の歌』のチェロ演奏によって
知った人も多いと思います(私もその一人です)。
亡くなる2年前の94歳の時です。
このコンサートではカザルスが作曲した『国際連合への賛歌』が自身の指揮で初演され、
当時の国連事務総長からカザルスへ国連平和賞が贈られたそうです。
演奏会最後のカザルスの国連賛歌が演奏されると、
指揮台をおりたカザルスは大勢の参加者に向かって静かに語り始めました。
私は長い間、公の場でチェロを演奏していませんでしたが、また演奏すべきときが来たと感じています。
そして、運ばれてきた愛用のチェロを手にして、さらに続けました。
カタロニアの民謡から『鳥の歌』という曲を演奏しようと思います。
鳥たちはこう歌います。『Peace, Peace, Peace(平和、平和、平和)』と。
そのメロディは、バッハ、ベートーベンそして全ての偉人たちが賞賛し、愛したもの。
そしてわたしの民族、カタルーニャの魂なのです。
You Tubeで、その彼の肉声を聴くことが出来ます。
慟哭しているようにも聞こえます。
平和を願ったカザルスの演奏を是非聴いてみてください。
前奏のピアノの音色もどこか悲しげで、それでいて繊細です。
心に沁み入るはずです。
彼の魂の力を感じてください。
そして、想像してみてください。
今回の一連の「カタルーニャ独立」の結末はどうあれ、
その魂がこの現実をどう受け止めるのかを…。
2017年11月8日