スペイン・マドリードで開かれた国連の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)は、
当初予想された成果を上げることなく、15日に閉幕しました。
地球温暖化への対策とその損害に対する費用分担が決められる予定でしたが、
各国の隔たりがこれまでになく大きく
会期を延長して協議が続けられたにもかかわらず
溝を埋めることは出来ませんでした。
富裕国と新興大国、貧困国は妥協点を見いだすことが出来なかったのです。
そんな構図を示すキーワードとして
「気候アパルトヘイト」‘climate apartheid’ が注目されました。
「アパルトヘイト」というと
私はかつての南アフリカの人種隔離政策を思い浮かべるのですが、
アフリカーンス語の「分離、隔離」を意味する言葉が由来だそうです。
気候と「分離、隔離」とがどう結びつくのだろうと
最初は疑問に思っていました。
それは、気候温暖化がもたらす格差につながると知って
すんなりと理解できました。
その提唱者は、オーストラリアの国際法学者であり人権の専門家の
フィリップ・オーストン教授(ニューヨーク大学)です。
国連の特別報告書で最初に使用されました。
以下、彼の主張です。
裕福なエリートが何もせず、
引き続き化石燃料への投資から利益を得続けているかぎり、
われわれは“気候アパルトヘイト”という体制のもとにあります。
しかし”気候アパルトヘイト”という用語で重要なのは、
南アフリカのアパルトヘイトが崩壊したのと同じように、
持続不可能だということです。
政府は、化石燃料から再生可能エネルギーに転換する計画を進めなければなりません。
それによって、温暖化がすすめば財産を失ってしまう人たちに、
何らかの補償を与えることもできるのです。
これには、本当に大きな経済再編が必要です。
環境問題がもたらす負荷は
既にある格差をさらに拡大させるのです。
世界で最も経済的に豊かなアメリカが
地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」から
来年離脱するのは極めて忌々しき事態です。
そして、それらの格差は国家間だけの問題ではありません。
気候アパルトヘイトは、同一国民間の格差も
世代間の格差も拡大していきます。
最近、スウェーデンの16歳の環境活動家
グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さんが注目されています。
YouTubeなどでその言説を拝見するに
16歳とは思えない主張の確かさに驚かされます。
気候アパルトヘイトにより甚大な損害を直接に被る立場からの
必死な叫びなのだと感じました。
今後も、当事者としての若者たちが
世界を舞台に大人世代に猛抗議をしていくことでしょう。
気候温暖化問題の解決は、
大人世代のリーダーではなく、
直接被害を受ける若者たちが声を上げ、
為政者たちを動かしていく構図にあると私は予想しています。
そんな若者の中でも
特に女性のリーダーが数多く現れるような気がしています。
女性ならではの肌感覚が生命体としての地球の危機(正確には人類の危機)を直感させるのでしょう。
それを確信させたのが、
マーシャル諸島の気候変動活動家であり、詩人でもある
キャシー・ジェトニル=キジナーさんの国連でのスピーチです(2014)。
彼女は
日本人の濱川 明日香・濱川 知宏夫妻が主催するアース・カンパニーが選出したIMPACT HERO 2017でもあります。
余談になりますが、このアース・カンパニーという素晴らしい組織にも驚かされました。
若者たち、スゴイです。
(いずれこのメルマガで取り上げたいと思います。)
さてさて、次回のCOP26は来年イギリス・グラスゴーで開催されます。
そこで、今回持ち越しとなった
日本の隠し玉(炭素に由来しない新エネルギー技術、水素?)が
無事披露されることを願います。
「化石賞」は返上されるはずです(笑)。
2019年12月18日