208. 『旅をする木』書評

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社会医療人の星

龍村 仁 監督の映画『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』を御存じでしょうか?

映画『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』とは、

ジェームズ・ラブロック博士の唱えるガイア理論、

「地球はそれ自体がひとつの生命体である」という考え方に基づき、

龍村仁監督によって制作されたオムニバスのドキュメンタリー映画シリーズです。

1992年の「地球交響曲第一番」から2015年の「第八番」までが公開されています。

現在、80歳の龍村監督は第九番の製作に取り掛かっています。

完成が楽しみでなりません。

Stay homeの折、1997年公開の第三番が無性に観たくなりました。

副題に「故 星野道夫に捧ぐ」とあるように、

96年8月8日ロシアのカムチャツカで熊に襲われて死亡した

写真家 星野道夫氏の足跡を辿ったものです。

彼が愛した自然、アラスカの土地、友人たちを通して

星野道夫の魂を讃えた作品になっています。

続けざまに、彼の著作『旅をする木』を再読しました。

アラスカの自然をこよなく愛した彼の魂のエッセイです。

宜しければ、第87話もどうぞ。

87.「星野道夫を想う」
2018年1月11日(木) 午後9時00分放送の BS1スペシャル「父と子のアラスカ~星野道夫 生命(いのち)の旅~」を観ました。 ...

生前、彼は時折、新聞で熊の事故を見る度にホッとすると語っていました。

彼の言葉を正確に再現することはできませんが、

「人間を一撃で殺してしまう熊という、

ある意味、人間に対峙する厳しい自然が遺されていることが大切に思える」と言うのです。

そういう緊張感を以て被写体の野生動物や自然と向き合っていたことがわかります。

そして、彼は、自身の予言めいた言葉のごとく

熊の事故で命を失ったのです。

そのことを神聖なる生け贄のような解釈をする人もいるようです。

人間が自然に対して犯してきた罪を彼が贖ったということなのかもしれません。

彼の写真展の情報を入手しました。

コロナ禍が治まって、無事開催されることを願います。

名称:星野道夫 悠久の時を旅する 会期:2020年11月21日(土)~2021年1月24日(日) 会場:東京都写真美術館 地下1階展示室    〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内 主催:株式会社クレヴィス 協力:星野道夫事務所

名称:星野道夫 悠久の時を旅する

会期:2020年11月21日(土)~2021年1月24日(日)

会場:東京都写真美術館 地下1階展示室

〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内

主催:株式会社クレヴィス

協力:星野道夫事務所

日本の緊急事態宣言が5月末まで延長されることになりました。

まだまだ収束が見えない新型コロナウイルスの災禍から

私たちは何を学ぶべきなのでしょう?

動物から人間に感染がもたらされた点から

私たちの動物、自然との向き合い方が拙かったのではないかと思うのです。

人間は食用に動物を家畜化し、自然を征服しようとしてきました。

その間違いを正すようにと

自然から警告されているように思えてなりません。

自然との向き合い方を変えるべき時なのでしょう。

ポストコロナ社会は自然との共存がなされなければなりません。

このままでは『旅をする木』の書評になっていないとの批判を受けそうですので、

一言添えておきます。

そのタイトルにある木は木の文化である東洋文明を象徴していて、

石の文化である西洋文明と対比されています。

後者が自然を征服しようとする立場に対し、

前者は自然と共存し続けるという立場です。

星野のエッセイは、自然との正しい向き合い方を教えているように感じます。

最後に、著明な霊長類学者 ジェーン・グドール博士のメッセージを贈ります。

(2020年5月6日)