新しく出来た東京ミッドタウン日比谷に行ってきました。
もちろん、ショッピングではなく、映画が目的です。
日本人の辻一弘氏がメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したことでも話題になった『ウィンストン・チャーチル』です。
チャーチルの心情世界を当時の世界情勢と併せて丁寧に表現した作品です。
言葉の魔術師の異名を取るチャーチルの魅力が炸裂しています。
多くのリーダーたちが最も尊敬する人物として挙げているのが理解できます。
「世界のCEOが選ぶ、最も尊敬するリーダー」(2013年PwCJAPAN調べ)
映画のチャーチルは、かなり好意的に描かれているようですが、
彼の影響力の大きさは、その通りだったのだと思います。
チャーチルを支える女性たちの姿も見事に表現されています。
妻役のクリスティン・スコット・トーマスは、かなりの存在感でした。
映画『イングリッシュ・ペイシェント』でご存知の方も多いかも知れません。
秘書役のリリー・ジェームズも輝いていました。
NHK放送『戦争と平和』のナターシャ役として
過去に紹介しました。
さて、映画の本題に移りましょう。
一人の人間の持つ限りない影響力、
特に言葉の力がテーマなのだと思います。
ラジオ放送が普及し始めたことで
それらの力を一気に拡大できるようになりました。
ラジオと言えば、映画『英国王のスピーチ』(2010年)のジョージ六世の
チャーチルとの親交も細やかに描かれています。
ここで注意しないといけないのは、
言葉自体に、人を変える力が有るわけではないという点です。
(脇道にそれますが、珠玉の言葉というものは、人類が歴史をかけて外的足場に刻んできた魂を再生させるためのキープロダクトのようなものだと私は捉えています。)
影響力のある言葉というものは、
それを発する人間の人格に強く依拠していることを知らなければなりません。
言霊(ことだま)とはいいますが、
それを発する人間が全存在をかけて魂を注入することで、
初めて言霊となるのです。
書店には「人を動かす言葉集」「人をやる気にさせる言葉集」などが溢れています。
これは操作主義です。
言葉だけに頼ることの危うさを知らなければなりません。
人格を意識しないで、言葉を発することは操作主義に陥りやすく、
その操作主義は受け手に見破られることが多いことを
わきまえておくべきです。
キケロやホラティウスの引用も
絶妙のタイミングで、あのチャーチルが全身全霊で発するが故に
絶大なる影響力をもたらしたのです。
大学院の恩師の言葉が蘇りました。
「結局、何を話すのかが問題なのではありません。
誰が話すのかが、問題なのです。」
日頃から珠玉の言葉を大切に収集すること(←これを教養と考える人もいる。同意)
それが、まず大切です。
チャーチルの読書量には驚嘆するばかりです。
詩的要素も必要です。
しかし、それら以上に大切なのが、
その言葉を語るに相応しい人物になることなのだと思います。
究極、問われるのは、誰が語るのかということ、
多くのリーダーたちの研鑽がそこにあるのだということに思い至るのでした…。
2018年4月11日