村上医師の“ことば”はストレートだ。
ジャブやフック、ブローがない。
いきなりストレートで打ち込んでくる。
その言葉は街の中にある。
街を歩き、体で感じ、紡ぎだされる。
生活の場で繰り広げられる“ことば”だ。
今、その“ことば”を受け止めろ。
正面から受け止め、打ちにいけ。
そのパンチが医療を変えていく。
第4回「義務を果たせ!」
いい医療とは患者の要望に応えることでしょうか。
日本の医療は商売ではありません。
社会保険制度に基づいた相互扶助です。
誰もが自由に使っていいものではありません。
相互扶助には義務と権利が生じます。
義務を果たすことで権利を受けられる。
介護保険では介護保険料を納めることと、
寝たきりにならないように努めることが義務です。
医療保険では医療保険料を納めることと、
健診を受け健康な生活に努めることが義務です。
私たちはこうした義務をどのくらい理解しているでしょうか。
これらは国民皆保険制度がスタートした1961年に示されました。
知らなかったというのは言い訳にすぎません。
交通規則を知らなかったと言って赤信号を渡りますか。
制度はルールを守ることによって維持され、機能を果たします。
義務を果たさず権利だけを主張していないでしょうか。
健診も受けず、不摂生な生活を続け、病気が悪化した状態で受診する。
患者が要求するから、あるいはリスクを回避するために
不必要な検査や投薬を行う。
権利の拡大解釈が国民皆保険制度の根幹を揺るがしています。
世界に冠たる制度を維持しなければなりません。
もう一度、国民が相互扶助の原点に立ち戻る。
みんなが義務を果たし、少し我慢して、ケアを充実させる。
そうすることで多くの問題が解決できると思います。
※次号に続きます。
※本原稿は2013年12月15日発行の「ツ・ナ・ガ・ル15号」からの掲載です。
村上智彦 Tomohiko Murakami
「何を言われても死ぬことはない」とあるお坊さんから言われ、「吹っ切れた」という村上医師。忙しい合間を縫って羽田空港のラウンジで取材に応じてくれました。“軍事オタク”を標榜するだけあって、駐機中の飛行機に目を輝かせています。次の世代に責任を持たなければならない、そのために行動している…、いつしか“オタク”から公の顔に変わっていました。
1961年北海道生まれ。医師。北海道薬科大学、金沢医科大学医学部卒業。自治医科大学地域医療学教室で地域包括ケアを学ぶ。NPO法人ささえる医療研究所理事長。2009年若月賞受賞。2017年5月11日 逝去。