今回は、8月24日に発売されたばかりの
『成長が「速い人」「遅い人」』に迫ってみます。
著者と私の共通の恩師である田坂広志氏は
代表的著作『仕事の思想』の中で
仕事の真の報酬は「決して失われることのない成長」であると説いています。
誰にとっても大切な
この「成長」という万人共通のテーマを前面に打ち出している点に
まず、度肝を抜かれました。
まさに直球、ド・ストライクという感じです。
著者はOD(組織開発)理論を駆使する一流のコンサルタントであり(実践者)、
かつ大学教授という研究者、教育者の面も持ち合わせています。
その上で、
志を持った人々を、大学から社会へ。
企業から社会へ。
日本社会から世界へ。
世の中へと、自らも変革し、変化する人を育てて、世に送り出す。
そして、日本をより良く変える(p.36)といいます。
その現在の姿を見れば、「成長の速い人」という印象を持ってしまいますが、
本書では、その著者が自らを「成長の遅い人」として
その成長の変遷を心情面も含めて詳らかにしていきます。
そして、どのようにして今の「成長の速い人」変わることができたのかを明らかにしています。
特に、挫折経験を乗り越えて、自身の真の使命感に目覚めていくくだりは
多くの人の参考になると思います。
私もそのような体験をしましたから、著者に強く共感しました。
本文中の知恵に満ちた、珠玉の言葉を抜粋しましょう。
- あなたの気になる「社会課題」を見つけ、「没頭エネルギー」を育み、その解決へあなたの「職業の仕事」に結びつけてみる。p36
- 成長が遅いと感じるからこそ、速くなるための「工夫」を考えることができるのです。p38
- 「感じる」を「考える」より先にする。p47
- 自分の感じることや、自らがしたいことだけは、誰にも「真似ができない世界」なのです。p48
- 「リサーチ、リサーチ、ノーアクション病」p61
- 試す「実験の量」が、成長スピードに良い影響を与えます。p68
- 「決めて、解決する人」を、著者は「責任者」と呼びます。p79
- 自分が自分を磨く修業と、師匠から直伝で直接、学び、自らを磨く修業、のふたつがあります。p109
- 「何も教えてくれない病」p118
- 「一流のプロは、気を緩めず、闘い続けられる」p126
- 知をインプットする時は、積極的に「教わる」を先に使うということです。そしてアウトプットした時に「学ぶ」を使うことで、成果を変える「学び方」ができます。p127
- 掴んだ智恵を、眼に刻み、心に遺す。p131
- 口数から足数へ。足数から耳数へ。p140
- 脳味噌から湯気が出るほど考える。p148
- 迷ったら、やる。p150
- 「調べられない知」p155
- 一言で言えば、「体得」です。p158
- 「情熱は、持ちたくても、持てない人には持てない」p165
- 挫折体験から得られる最高の贈り物がある。p168
- 「日本の結束力は世界を変える力になる」p171
- 「これから、お互いを支え合う、バインディング・ペアになる!」p180
- 自分自身が「謙虚な仮設」を持って、試し続けない限り、今の状況は良くならない。p200
- 自分の気づき方を、変える。p201
- 自ら機会をつくり、自ら決めて、動き始める。p204
達人であれば、上記を見ただけで深く頷かれるに違いありません。
中でも、「迷ったら、やる」が私には刺さりました。
やはり私は、p.184の七つの役割うちの「突破」が使命なのでしょう。
表4(裏表紙)の飛躍の7力(ななりき)の図には
相当なこだわりがありそうです。
時に、下って上るステップにリアリティを感じます。
本書には、成長が「速い人」になるための智恵が満載です。
著者が全身全霊で、わかりやすく、そのツボを説いてくれています。
深読みすればするほど、身を削って書いた文章であることが伝わってきます。
そもそも人の成長は個別性が有り千差万別です。
よってそれを導く手法は、ある意味、個別解であり特殊解であるはずです。
それを普遍解にまで見事に昇華させている点は、著者の類い稀なる力量の故でしょう。
しかしながら、成長が「遅い人」に限って、
本書を手に取る機会が少ないような気がします(だから成長出来ない。勿体ない)。
私を含めた、成長が「遅い人」こそ
本書に伴走してもらうことで、
成長が「速い人」を超えて
成長が「深い人」になれるのだと思います。
2018年8月29日