238.『ファイナル・イヤー』映画論考

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第235話で、映画「セルジオ」を紹介しました。

235.『セルジオ』映画論考
Netflixオリジナル映画「セルジオ‐世界を救うために戦った男」を観ました。 彼の存在は映画を観るまで知りませんでした。 今週は、その高潔な魂を紹介したいと思います。

その原作者が、主人公のセルジオと同じ正義感溢れる人物であることを知り、

とても興味を持ちました。

オバマ政権時代のアメリカ国連大使のサマンサ・パワーです。

(苗字がPowerなんて、スゴイ家系です。)

サマンサ・パワー

彼女を調べているうちに表題の映画に辿り着きました。

当初、彼女にセルジオ氏と同じ香り(匂い)を感じ惹かれていったのですが、

この映画には、同じ匂いを放つ素晴らしき人物たちが登場しています。

当然、オバマ大統領はその最たる人物です。

しかし映画は、オバマ大統領よりも

チーム・オバマ(←私が勝手に命名)の3人をクローズアップしています。

ベン・ローズ

ベン・ローズ

一人目は、ベン・ローズ

オバマ大統領の外交政策におけるスピーチライターです。

彼はオバマ大統領の側近中の側近ですが、

副補佐官というポジションだけではなく、

求める理想が極めて近いということがより重要なのだと思います。

同じ理想世界を目指しているが故の近さなのです。

ジョン・ケリー

ジョン・ケリー

次に、ジョン・ケリー

オバマ政権2期目の国務長官です。

ベトナム戦争では数々の勲章を受章した勇敢な兵士でしたが、

その後、勲章投げ捨て事件を起こすほどの

筋金入りの反戦活動家、政治家となります。

彼の行動力と正義への情熱は映画の画面からも感じ取れます。

オバマ政権のファイナル・イヤーを

一時も無駄にはしないという気迫が伝わってきます。

最後にサマンサ・パワーです。

彼女はアイルランド出身の移民です。

映画の中でも、

移民の自分がアメリカの代表として国連に参加していることを

アメリカの寛大さと偉大な点だと語っています。

余談ですが、彼女の配偶者はキャス・サンスティーンです。

何と、第84話で紹介したノーベル経済学賞セイラー博士の共著者として「ナッジ」を書いています。

84.「チーム医療フォーラムは医療界のNudgeである」
今年最後のメルマガとなりました。 1年の締めくくりに 今年のノーベル経済学賞のリチャード・セイラー博士を取り上げたいと思います。...

キャス・サンスティーン

私はサマンサ・パワーから様々な影響を受けました。

私と同じように彼女に興味を持った人は

2008年のTEDに登壇した姿を見てください。

セルジオについて熱く語っています。

たくさんの教訓をセルジオから学び、受け継いだのです。

この年、セルジオの書籍を出版し、

その後、オバマ政権に本格的に参画し、

2013年に国連大使となっていきます。

3人に深く共鳴する私ですが、

彼らの理想は、時に世間の反感を買うことも私は知っています。

事実、オバマ政権の後、その反動からか

真逆のトランプ政権が誕生し、

オバマ政権が成し遂げようとした理想を見事に破壊し尽くしました。

トランプ政権の終焉は確実になりそうですが、

アメリカ国民の半数弱がトランプ支持を表明した事実は忘れてはいけないでしょう。

さて、チーム・オバマの3人に共通するのは

人間の感情を大切にしている点だと私は思います。

特に、サマンサ・パワーは顕著です。

アイルランド移民の苦労人で、2児の母ということもあるのでしょうが、

それ以上にそのキャリアの中で、

世界中の苦難の地に生活する人々との時間を共有してきました。

生きる悲しみを深く知る人です。

映画の中でも、難民キャンプや紛争地に直接赴いては、

現地の人の生の声を聴き、同じ人間として共に涙しています。

まさに天が訓練した人物です。

そうした深い悲しみを

世界をより良くするためのバネにしているようでした。

彼女の姿を見るとき、これからのリーダーは

男女を問わず、共感力が求められるのだと思いました。

そうした意味で、新しい社会は、

数多の女性リーダーたちが活躍する時代になるのだと直感しました。

<TED>

2020年12月2日