ファクトフルネスとは、「データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣」です。
逆に、何と多くの人が(もちろん、私も)、
データや事実に基づかないで、世界を誤認してきたかということです。
著者のハンス・ロスリング博士はTED Talkで御馴染ですが、
2017年2月7日に他界されていたそうです(知りませんでした)。
膵臓癌に侵されながらも、ライフワークとしてまとめ上げられたのが本書であり、
博士の後世への最大遺物といえるでしょう。
素晴らしい遺作です。
息子オーラ・ロスリングとその妻アンナ・ロスリングとの共同作品というのも素晴らしいです。
すでに世界中で100万部を超えるベストセラーになっていることからも
内容の素晴らしさが伺えます。
最初の13のクイズを通して、
賢い人ほど、世界を誤認しやすいことが示されます。
私もしっかりと思い知らされました。
それが、10の誤ったフィルターによるものであることが明かされていきます。
いずれも納得です(ネタバレになるのでその詳細は書きません)。
博士は、世界中の人々の1日の所得を
1~4のレベルに分類します(米ドル換算)。
2ドル以下のレベル1からスタートし、4の倍数の8ドル、32ドルで
上図のように区切っていきます。
人々はレベル1からスタートし、
レベル4を目指すことになります。
下のグラフを見てください。
喜ばしいことに、1800年にはレベル1の極度の貧困率が85%であったのに対し、
1966年には50%、2017年には9%にまで下がっています。
博士はご自身を「可能主義者」と定義していますが、
私もそうありたいと思います。
数え切れないほどの小さな進歩が世界中で起きているのです。
レベル1の貧困率の減少はその好例でしょう。
そうです。
「世界はどんどん悪くなっている」のではないのです。
本書を読み終えて残るのは
ハンス・ロスリングという人の世界の人々への温かい眼差しであり、
彼の世界を想う優しさです。
行間からは彼の熱心な息遣いが伝わって来るような気がしました。
癌で余命いくばくもない状態になった時、
彼は社会に対する感謝の気持ちを本書に込めたのだと思います。
繰り返しますが、いろんな意味で価値ある本だと思います。
最後に医療福祉系のファクトフルネス満載の本を紹介しておきます。
『DESIGN MY 100 YEARS 100のチャートで見る人生100年時代、「幸せな老後」を自分でデザインするためのデータブック』
書名が長過ぎて、引用し難いのですが、
中身はとても素晴らしいです。
ファクトフルネスで超高齢社会を思考する際には
重用するはずです。
巻末の著者と安宅氏の対談も必見です。
2019年2月27日