MEDプレゼン2016にご登壇いただいた荻阪哲雄氏の新著です(日本経済新聞出版社)。
今、これまでのビジネス書にはない読了感を抱いています。
無意識下に勇気づけられたような感覚です。
一般企業の物語ですが、
医療界にも似たような話がたくさん存在しています。
病院内での組織変革に本気で取り組むのであれば、かなり参考になるはずです。
あるいは、既に組織変革に取り組んでいる医療者には、最高のエールとなるはずです。
本書は三作目のようですが、
前二作より、こちらをお薦めします(←荻阪さん、ゴメンナサイ)。
是非、組織で働く人間ドラマとして読んで欲しいです。
医療人にとっても、得るもの大であることを保証します。
医療環境の劇的変化の中で、病院マネジメントが重要視されるようになりました。
無計画で野放図な設備投資や放漫経営は論外として、
病院によっては、乾いた雑巾を絞るような
Fact中心のマネジメントがなされているようです。
収益を確保するためのフォーマル組織はもちろん重要です。
しかし、そんな底の浅いマネジメントでは、人が乾いてしまいます。
対策として、
目に見えない価値を大切にするインフォーマル組織を
意図的に組み込むことが重要です。
バランスシートからは見えてこない世界があることをはっきりと知りました。
そんなマネジメントの知恵と現場の人間の人情の機微が
細やかに表現されています。
組織が生き物であるということを教えてくれました。
実は、これは古くからある
日本的経営の根幹であると著者は指摘しています。
今回、この本に出会って
人間存在の複雑さを知ると同時に、
その無限の可能性も感じることが出来ました。
額の汗はもちろん、
心の汗も必要なのだと改めて感じました。
また、3つの方向性(存在意義、未来の目的地、やらない戦略)についても学びました。
極めて重要な視点です。
これからは、この視点で組織づくりを考えてみようと思います。
組織の中の「くせ者」の存在とその重要性についても
「なるほど!」と実感しました。
そして、目には見えない資本が、私にも少しだけ見えるようになりました。
私にとっての名シーンを列挙してみます。
p14-17 「師弟再会の夜」のシーン:こういう師を持つ人は幸せです。
「私は、敗れました」という主人公に、師である教授がすべてを包み込むようなメッセージを授けます。この師弟の会話が実に羨ましいです。
p42 「お前しかできない体験を積んでいる。おめでとうだよ」という
軍師的存在である高杉 組織コンサルタントが、主人公 姿さんにかけた言葉が秀逸!!
p52 高杉さんの姿さんへの評価:「…ゆえに、姿は強い。敗れないのです」
このような言葉で語られる姿さんもさることながら、そう表現する高杉さんも人物なのでしょう。
志を共有する者の厚き信頼関係を感じます。
親友とはこういう言葉を交わし会える関係なのかもしれません。
p58 高杉さんが、姿さんに、「自分のエゴが自分自身で見えているか」と問うシーン
さらにそれを正面から受け止めた姿さんが大きな覚醒をするシーン:
まさに真剣勝負の世界です。
p274檜垣社長の言葉:「社員一人ひとりが誇りを持てる会社へと変わりたいと考えている。
そのために、私自身がDJ社に誇りを持つことから始める」
黒豹と呼ばれていた存在から明らかに変貌しています。
この気づきは本当に素晴らしい。
見習います。
p278 檜垣社長が全社員へメッセージを語るシーン:
まさにクライマックスのシーンですが、ドラマ化された場合、
どんな映像になるのだろうかと勝手に想像してしまいます。
やはり間接的な表現が良いような気がします。
という訳で、ネタバレにならない範囲で紹介したつもりです。
本書のタイトル『社員参謀』の深い意味は、
ご自身で本書を手にとって解釈して欲しいと思います。
その上で、
「参加する医療」の実現をミッションとするチーム医療フォーラムとしては、
いのちの社会における
「社員参謀」ならぬ「市民参謀」にならなければならないと決意しました。