169.「医療プロボノ」という発明

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社会医療人の星

「ツ・ナ・ガ・ル」 No.32が完成しました。

今回も難産でした。

ハウツウ的な情報提供型の雑誌とは一線を画し、

社会に問いを投げかけるというのが

「ツ・ナ・ガ・ル」の編集方針です。

それだけに特集にはこだわりを以て取り組んでいます。

そんな中で、今回の特集テーマに選んだのが

「医療プロボノ」でした。

医療版のプロボノのことなのですが、

そもそも「プロボノって何?」という声が聞こえてきそうです。

プロボノはラテン語のPro Bono Publico が語源です。

日本語では「公共善のために」と訳されます。

というと、ボランティアのこと? と誤解されてしまうかもしれません。

一般的なボランティアとは少し意味合いが違うのです。

プロボノ文化が花開いているアメリカで最初にプロボノ活動を始めたのは

弁護士たちでした。

彼らが持つ法律の専門知識を非営利団体のために提供し始めたのです。

定款の作成、契約書のチェックや作成など

法律面での強力なサポートは、非営利団体に強固な基盤を与えることになります。

弁護士などの専門知識を持った人々が公園の草むしりをする場合、

それはそれとして尊い実践ではあるのですが、

これは一般的なボランティアの範疇となります。

専門家が非営利団体のために専門家ならではのボランティア活動をするのが

プロボノだと私は考えています。

専門知識やスキルを活かすという点で

「ボランティア以上」と位置付けたいと思います。

私の中のプロボノの基準はもう一つあります。

それは、プロボノは「社会起業家未満」という定義です。

専門家がその知識やスキルを活かすとはいえ、

社会起業家のレベルまで気負う必要はないと思います。

プロボノは、社会問題を解決しようとする非営利団体の

強力な助っ人であることは確かです。

しかし、社会問題解決のプロフェッショナルである社会起業家である必要はないと思うのです。

人間には貢献心という本能があると私は信じていますが、

それをいかんなく発揮するのは、社会起業家の専売特許ではなく、

プロボノやボランティアにも開放されているのだと思います。

否、後者の人々こそ、無理なく広い分野でその貢献心が発揮できるのではないでしょうか?

よって、私の中でのプロボノの定義は、

ボランティア < プロボノ < 社会起業家 となります。

いかがでしょう?

そして、このプロボノ文化を医療界に広め、

医療プロボノを発展させたいのです。

これからの社会は、いのちの場が主役となっていきます。

「機械論パラダイム」から「生命論パラダイム」へのシフトが始まっているからです。

医療人材の活躍の場は、益々広がるはずです。

超高齢社会における各地域では、医療人材の知識、スキルが求められています。

しかし、そこはビジネス・チャンスの場ではないと思うのです。

なぜなら、各地域には予算が無いからです。

そこで、一案です。

ドラッカーの提唱するパラレルキャリアを思い出してみましょう。

03.「パラレル・キャリア」のすすめ
パラレル・キャリア(parallel career)とは、 一つの組織に属して同じ仕事を続けるだけでなく、 社会的活動を積極的に...

医療人としてライスワークをこなし、

プロボノワーカーとしてライフワークを生きるのです。

私は、医療界の学会運営を見ていて、

この発想を得ました。

各種の学会運営は、見事なまでのプロボノワークによって支えられ、

そこでの活躍によって、多くの医療人が

プロフェッショナルとしてのライフワークを獲得しているのです。

私にはそう見えます。

これはある意味、発明であり、イノベーションです。

「医療プロボノ」は誰が何と言おうと、必ず発展します。

「医療プロボノなどに誰が参加するのか?」という人は対象外です。

「その手があったかー!」と走り寄って来る人を対象にしています。

そういう人は必ずいます。

しかも、かなりの数で…。

まずは、メディカルウォーキング(医歩)で、医療プロボノの先鞭を付けて行きます。

メディカルウォーキング

自画自賛になりますが、素晴らしいテキストが完成しました(その紹介は後日、必ず!)。

医歩の生態系を着々と構築して

「医療プロボノ」の発芽を促していきます。

乞うご期待!

2019年8月7日