いま私は、チーム医療フォーラムの新規事業としての
「いのちのタウンミーティング」について考察を巡らせています。
時に、新しい人に会い、新しいアイディアを吸収し、
時に、過去に書いた自分の文章を読み返しながら
新たな価値を見出そうとしています。
そんな中で、7年前の2011年に書いた表題名の文章に出会いました。
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「群衆の叡智」
システムが複雑化すると
管理者であってもその全てを理解しコントロールすることが難しくなります。
今日の医療界も例外ではありません。
誰も望まない方向に突き進むことも有り得るのです。
しかし、諦めるべきではありません。群衆の叡智に目を向けてみましょう。
ジェームズ・スロウィッキーは
専門家でない人々が集まって専門家よりも正しい結論を生み出すと指摘しています。
群衆の叡智とか、集合知とか呼ばれるものです。
ジェームズ・スロウィッキー:『「みんなの意見」は案外正しい』、角川書店、2006
その群衆の数が多ければ多いほど正しい判断に近づくようなのですが、
Web以前の時代には多くの人々の意見を集めるのにコストがかかり過ぎたというのです。
それがWebを駆使することにより、
低コストで多様な意見を収集し集約できるようになったのです。
その恩恵に浴しているのは、
今は未だソフトウェアなどの一部の分野に過ぎないのでしょうが、
今後は医療の分野にも応用されるはずです。
㈱ウィルモアは、
Webによる群衆の叡智をもとに事業展開している医療情報提供会社です。
患者や家族のみならず、広く国民にWebによる積極的な医療参加を提起しています。
このような新しい流れが医療界にも生まれてきていることを非常に嬉しく感じます。
この群衆の叡智の思想は、
一人の叡智ではなく、多人数、多職種による知を重視しています。
この点はチーム医療との親和性が高いといえるでしょう。
今後、チーム医療が病棟や病院という枠を超えて行くときに、
群衆の叡智としての側面が顕著になるような気がします。
社会におけるインパクトも生み出されるはずです。
まずは医療人による群衆の叡智の存在を信じることができるかが鍵でしょう。
医療人一人ひとりの意識が問題となるのだと思います。
さらには、全国民が医療情報を介して医療に積極的に参加するようになるべきでしょう。
医療専門家と全国民による群衆の叡智を上手に導き出せたなら、
医療界にさらに良き方向を提示できるでしょう。
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自分でも結構、まともな事を書いているなぁと感心するのですが、
さらに今の立場で解釈すると
既に7年前、私の中に「いのちのタウンミーティング」の構想があったことを
はっきりと認識しました。
当初、「いのちのタウンミーティング」は問題解決型をイメージしていました。
しかし、それでは全く新規性がありません。
チーム医療フォーラムがわざわざ新規事業にする意味も無いでしょう。
そのため、
医療問題に関する熟議空間には違いありませんが、
問題解決を目指すのではなく、
新しい可能性発見の場にしたいと考えています。
多くの方は、このようなディスカッションの場に出ると
自分の意見や背負っている団体の意向を通そうとしてしまいます。
問題解決型のディスカッションの場では、
それぞれの専門家がパネリストとして招聘され
様々な意見が戦わされ、合意形成を目指すことになります。
が、それでは予定調和型の解決策しか導き出せません。
自身の主張の変化を恐れてはならないと思うのです。
むしろ、それを歓迎すべきです。
その場での合意形成など必要ありません。
そんな場が、私が創る熟議空間のイメージです。
参加者が自分の立場やこれまでの主義主張を捨てて
自分の頭でしっかりと考えてみることが大切なのです。
そのような一人ひとりの到達点を
群衆の叡智にまで高めるシステムを包含した
「いのちのタウンミーティング」を目指したいと思っています。
2018年3月28日