75.「公衆衛生学会 初参戦」

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社会医療人の星

第76回日本公衆衛生学会総会が10月31日(火)~11月2日(木)、

鹿児島県鹿児島市で開催されます。

総会のテーマは、

「明治維新と薩摩と公衆衛生~公衆衛生の黎明期を支えた地から未来への発信~」です。

何でも、今年は明治維新(1868年)から149年、大政奉還から150年目に当たるらしく、

明治維新ゆかりの地である鹿児島で開催するには相応しいテーマといえるでしょう。

(会津人にとっては複雑な感情が残りますが…)

維新以来、日本は文明開化、西洋近代化の道をひた走ることになる訳ですが、

医学史上、公衆衛生学の果たした役割は大なるものでした。

否、医学史上というより

日本社会全体、全国民に多大な貢献を成したといえるでしょう。

私は常々、この100年間で社会に最もインパクトを与えた変化は

寿命の倍化である点を力説していますが、

その出発点に公衆衛生学があったのだと思います。

そうした近代、現代日本の礎を築いた公衆衛生学は

今日、様々な分野に進展しているようです。

プログラムを見ているだけでも、その充実ぶりが窺えます。

実は私、今回が初参加となります。

メディカル・ウォーキングの活動を通してご縁をいただきました。

私が登壇するシンポジウムのタイトルは、

超高齢社会を楽しく生き抜く体づくり~地域で行う貯筋運動のススメ~ です。

社会医療人の星

そして、私の演題名は「GDMGross Domestic Muscle)こそ先進国の健康指標~人生ラスト10年問題への処方~ 」としました。

以下の論旨で話してきます。

日本人の平均寿命と健康寿命との間には、男性で9年、女性で12年のギャップがあるのをご存知だろうか。実はその約10年間に超高齢社会における様々な問題が露呈するのである。そこには、亡くなる直前まで元気な「ピンピンコロリ型」、大病発症後長く寝たきり状態となる「寝たきり型」、加齢とともに緩やかに動けなくなる「サルコペニア型」の3つのパターンが有るといわれる。サルコペニアとは加齢に伴う筋肉量減少を指すが、この「サルコペニア型」は、男性で7割、女性で9割弱を占めている。医学の進歩は「ピンピンコロリ型」の増加と「寝たきり型」の減少をもたらし、結果的にこの100年間で日本人の平均寿命を2倍にした。しかしながら、高齢者の半数以上が該当する「サルコペニア型」への対応はなされてはいない。サルコペニアが病気になりやすく治りにくい体の状態をもたらすため、筋肉を如何に保持、増進させるかが超高齢社会を楽しく生き抜くための鍵となる。貯筋運動の重要性は高まるばかりであろう。

超高齢社会のイシューとして人生ラスト10年問題を挙げたが、そこには3つの節目があると捉えている。(1)歩けなくなるとき、(2)食べられなくなるとき、(3)認知できなくなるとき である。貯筋運動は、それら3つの節目対策に有効である根拠を紹介したい。しかしながら、低栄養状態でのウォーキングは、逆にサルコペニアを進行させることが医学的に分かっており、栄養と運動を両立させるという視点が極めて重要である。また、高齢者の慢性的な低栄養状態が放置されているという事実にも目を向けなければならないと考えている。

ここまで個人レベルでの「貯筋運動」の重要性に言及したが、国レベルでも重要である点を強調しておく。国民の筋肉量が減ると、国全体の医療や介護の費用が増すことが分かっている。逆に国を挙げての「貯筋運動」によって国民全体のサルコペニア対策がなされれば、社会保障費の削減に寄与できるということになる。「貯筋運動」が個人レベルから国家レベルのムーブメントに広がることが求められているのである。先進国ではGDPを国力の指標としていることが多いが、成熟した国においてはGDM(Gross Domestic Muscle:国内総筋肉量)こそを超高齢社会の指標とすべきであると提唱したい。

*GDMについては、43 筋活 GO! GO! をご参照ください。

43「筋活 GO! GO!」
以前、九州のラジオ番組に出演したことを書きました。 今回は、その漫画版が完成しましたので報告します。 番組タイト...

ところで、公衆衛生学会総会には番外編的なユニークな勉強会があります。

自由集会と名付けられています。

様々なテーマで、講義だけではない実践的な学びの場が用意されています。

そこでも、40分の時間をいただいて

「人生ラスト10年問題におけるオールジャパン戦略」の講義をしてきます。

超高齢社会における栄養と運動の重要性を熱く語ってきます。

本番まで残り1週間となりましたが、

今回の公衆衛生学会とのご縁を大切にしたいと思っています。

というのは、公衆衛生学が維新の時代と同じくらい

否、それ以上に

これからの日本の超高齢社会において有用な役割を担うような気がするからなのです。

しっかり学んで吸収し、

さらなるご縁を深めたいと考えています。

2017年10月25日