NHKの海外ドラマ『戦争と平和』の全8回の放送が終了しました。
宜しければ、以前のブログをご参照ください。
今のところ、再放送のアナウンスはなく、
NHKオンデマンドにも収載はされていないようです。
今回のBBCの力作を視聴して、
やはり、トルストイの『戦争と平和』は名作であると感じました。
小説で読むのはかなり骨が折れるので、
オードリー・ヘプバーン主演の映画版で観ることをお勧めします。
(但し、小説のストーリーをある程度知っていないと楽しめないかもしれません。)
概要を知っていただくためにNHKのサイトからの番組紹介を引用しておきます。
19世紀初頭、ナポレオン戦争下のロシア。激動の時代に翻弄されながらも、若者たちは人生の意味と真実の愛を求めて生きる。トルストイの名作を壮大なスケールで描く!
少し風変わりな青年ピエールは貴族社会で疎外感を感じていた。しかし、巨額の遺産を相続したことで、周囲の態度が急変する。ピエールの親友アンドレイはナポレオンに憧れ、軍人としての名誉を追い求めている。美少女ナターシャは身を焦がすような恋に憧れているが、まだ“王子様”は現れない。フランスとの戦争が始まり、希望に満ちていた3人の人生は時代の大きな波に飲み込まれていく。
番組紹介にもある通り、
多くの人は『戦争と平和』は恋愛小説と捉えているでしょう。
私は違うと思うと以前にも書きました。
ある人は、「真の英雄は民衆である」というのがメイン・メッセージであると言います。
しかし私は、トルストイが本当に言いたかったことは全く違うと思うのです。
『戦争と平和』というタイトルにもそれが込められています。
ズバリ、それは和解だと思います。
和解こそ、『戦争と平和』に込めたトルストイのメッセージだと思います。
小説には実にたくさんの登場人物があります。
その登場人物たちが複雑に絡み合い、
愛憎劇を繰り広げます。
ある意味、個人における戦争状態です。
複雑に絡み合い、敵対し合った人間同士が
ふとした瞬間に、和解へと転じていきます。
最初からの平安は無でしかなく、
対立を乗り越えた上での和解だからこそ平和へと繋がるのだと思います。
正義感の強い実務派 アンドレイが
死に至る負傷をした際に、
ナターシャを奪ったアナトールに対し寛大な許しを与えるシーンがあります。
憎んでも憎み切れない存在でありながら
死を前にした時に恨みが解消し、逆に和解をしていくのです。
ナターシャに対しても自分を裏切った不貞の女性と見ていたのが
死ぬ直前に、ナターシャを許すどころか、
自分の非を許してほしいと請いながら、和解していくのです。
そんなシーンに私は
和解という深いメッセージを感じるのです。
ピエールもそうです。
恋敵のドーロホフとは決闘までしながら
最後には深い友情を結んでいきます。
ピエールにも、ドーロホフにも和解の心情が生まれてきます。
ナターシャもそうです。
彼女の場合、和解の相手は自分自身だったように思います。
見つめれば見つめるほど、
探せば探すほど、
『戦争と平和』には和解のシーンが認められるのです。
私たちの人生において、人との出会いは喜びであり
悲しみであり、葛藤でもあります。
人間同士の葛藤の中で、
悪戦苦闘しながら私たちは成長していくのでしょう。
成長こそ、人生の目的であるようにも思えます。
しかし、何のために私たちは成長するのかという疑問が私には残ります。
それは、和解のためだと私は考えています。
人生の目的も、全世界の目的も、
この和解にあるような気がしてなりません。
今回はかなり硬いテーマになってしまいました。
『戦争と平和』から
ふとそんな考えが浮かんできました。