45.「割り切りとは精神の弱さである」

社会医療人の星

大学院の恩師に教えていただいた格言があります。

「割り切りとは、精神の弱さである」

亀井勝一郎

臨床の現場では、この割り切りが密やかに忍び込んできます。

実はほとんど意識されることなくなされることが多いのです。

臨床の場で、若手の医師が

「もう、この患者さんは助からない。何をやっても無駄だ」と、

患者を見捨ててしまう場面に出くわすことがあります。

一方で、ベテラン医師が同じ患者に対し、

執拗なる検査とその結果への緻密な分析を行い、

また、様々な文献を調べ上げ、

次なる治療法はないかと懸命の努力をしている姿を目にすることがあります。

そのようなベテラン医師の努力にもかかわらず、

患者さんが快方に向かうことが少ないことも事実です。

そして、医学の歴史の開闢以来、同様のパターンが繰り返されてきました。

このような若手医師とベテラン医師の行動上の乖離はどうして起きるのでしょうか?

それは、精神の強さに関係しているように私には思えます。

結果だけを見ると若手医師の見立て(診断)のほうが当たっていると言えるでしょう。

しかしこの時、往々にして起きているのは、

若手医師の心の中に密やかに忍び込む「割り切り」です。

この「割り切り」は精神の弱さ故の産物です。

人間としての魂の限界がそうさせるのです。魂が脆い証拠なのです。

ともすれば、この時のベテラン医師の姿は、

周りの人たちにはスマートさに欠けるように映るでしょう。

冴えない医師に見えてしまうでしょう。

泥臭く格好悪い存在に思われるかもしれません。

しかし私は若き医療人たちに忠告しておこうと思います。

「ベテラン医師の姿勢を見習いなさい」

「簡単にあきらめてはいけない」

「割り切ろうとする弱き心を排除しなさい」と。

社会医療人の星

我々は、「割り切らない」でいることの難しさを謙虚に受け止めるべきです。

「割り切らない」ためには、

強き精神力、魂の強靭さが必要であることをしっかりと認識しなければなりません。

プロフェッショナルの世界では、

この「割り切らない」世界を如何に維持していくかが勝負であることを

若き医療人たちに強調しておきたいと思うのです。

いや、これは、正確には自分自身に向けた忠告なのだと感じています。

私たちは「狭き門より入れ」の如く、

簡単には「割り切らない」道を

敢えて選択していかなければならないのだと思います。