「山田方谷(やまだほうこく)」を知る人は少ないのかもしれません。
少しでもその存在を知る人であれば必ず、
敬愛の念を抱くのではないかと私は思います。
山田方谷(1805~1877年)は、
幕末期に財政破綻寸前の備中松山藩5万石を立て直した名財政家であり、
卓越した政治家です。
わずか8年間の改革で借金10万両(現在の価値で約300億円)を返済し、
余剰金10万両を作ったというから驚きです。
このような改革は、リーダーに相当な気骨がなければ実現しません。
その輝かしい実績以上に、その人物そのものが素晴らしいのです。
英傑そのものです。
河井継之助の師としても知られています。
上の文章の意味は、以下です。
父母に産み育てられ、
天地の間で生を営む。
男児たるもの、よくよく心に刻め、
草木とともに枯れ朽ちてはならぬと。
それにしても、経世済民のいかに困難なことか。
14歳で母を失った一年後、
失意から立ち上がる際に師に差し出した文章です。
気高き精神が伝わってきます。
その後、15歳で父親も失ったため学業を辞し
突然、一家三人の主になったのです。
一家の突然の不幸とはいえ、
断腸の思いで学問の道を諦めたのだと思います。
天は、世を導く人を
時にこのような試練を課しながら鍛えていくのでしょう。
その運命に心を折られ、挫けてしまう人も数多と存在したはずです。
方谷は違いました。
若き方谷の文章には、生まれ生かされていることへの感謝があります。
感謝を懐深く持つ人は強いのです。
「草木とともに枯れ朽ちてはならぬ」という言葉に
私は強く鼓舞されます。
頼山陽の「汝、草木と同じく朽ちんと欲するか」をも想起させます。
そして、
「それにしても、経世済民のいかに困難なことか」という言葉に
得も言われぬ共感を覚えます。
リーダーの苦悩を思わずにはいられません。
久しぶりに本物の気骨に触れたことで、心が復活してきました。
皆さんは、どうでしょう?
2017年7月12日