105. パラリンピック 荒井秀樹 監督に学ぶ

社会医療人の星

2018年5月19日(土)・20日(日)の2日間、

札幌開催の第27回日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会に参加してきました。

WOCナースと呼ばれる看護界のエースたちが集う学会です。

進取の精神に溢れた素晴らしい人材を育ててきた学会でもあります。

そんな学会ですから、今回もたくさんの刺激を受けて来ました。

中でも特別講演の荒井秀樹

平昌パラリンピックノルディックスキー日本代表監督のお話に釘付けとなりました。

パラリンピック 荒井秀樹 監督に学ぶ

パラリンピックノルディックスキーといえば、

2018年平昌パラリンピックで金メダルと銀メダルを獲得した

新田佳浩の活躍が記憶に新しいと思います。

パラリンピック 荒井秀樹 監督に学ぶ

そんな新田選手を見出し、育て上げたのも荒井監督です。

荒井監督からの学びをいくつか紹介しましょう。

最初に、私の障害者スポーツに対する誤解を解いてくれました。

「障害者スポーツは福祉の文脈で語られるものではない」

特にパラリンピックでは、

「“障がいがあっても”こんなに速く走ることができる」ということではなく、

「誰が一番か」という勝負の部分が重要になっているといいます。

限界への挑戦という概念でみた場合、

パラリンピックは、オリンピックを凌駕してしまうのかもしれません。

今回、荒井監督のお話を伺って感じたのは、

障害スポーツは、生涯スポーツという面も持ちながらも、

今後はエリート化が進むであろうということです。

かの新田選手も金メダルに到達するまでに10年以上の鍛錬が必要でした。

各国がオリンピック並の専任コーチや強化施設を整備しつつあるのに対し、

日本は相当に遅れていることも知りました。

これまでの業績は、次に紹介する新田監督をはじめとするチームの創意工夫に拠るものですが、

それがいつまで通用するかは不明です。

米国、ドイツ、北欧諸国がエリート化への加速をしている中で

日本においても障害者スポーツ、パラリンピックへの相応の支援が待たれます。

次に、科学的戦略です。

クロスカントリースキーの場合はストラクチャーとワックスが特に大事なのだそうです。

ストラクチャーとは滑走性を高めるためにスキー板の接地面につける細かい溝のことで、

高い技術力を持つ日本の企業を巻き込んで、

最高のストラクチャー技術を開発してしまいました。

また、日本の気象予報会社のウェザーニューズ社に協力を呼び掛け、

緻密な気象予想から適切なワックスを見出す手法を開発しています。

ワックスと気象予報を結びつけるなんてアイディアは簡単には思い付くはずがありません。

荒井監督の執念を感じます。

さらに、ICT技術を応用したタイムランチャーという新システムも開発しています。

パラリンピックでは選手の障がいの度合いによって係数があり、

実走タイムに掛けて計算されます。

そのため、目視できる順番と実際の順位は違ってきます。

そこで、リアルタイムに順位が確認できるシステムを

松本市のIT企業に開発してもらったのです。

正確な順位やトップとの差がコーチにも選手にも共有できるため

試合の組み立てが相当楽になるのです。

他国にはこんなシステムはありませんから、その優位性は計り知れません。

そして、最高の学びは、荒井監督の「不撓不屈」の精神です。

文字通り最初は一人での出発でした。

何もないところから(選手もいない状態)、

パラリンピックノルディックスキー日本代表チームをつくっていったのです。

選手の発掘、育成はもちろん、

スポンサーへのプレゼン、資金集め、認知度を高めるための広報、

チームボランティア集めに至るまで

あらゆることをやってのける馬力には脱帽です。

「お金がない」「国の支援がない」と不平を言わずに

であるならば、自分たちでやればいいと突き進む姿にたくさんの学びを得ました。

こういう世界は、ご本人の話を聴いて感じ入ることが大切ですね。

理屈ではなく、肌感覚で理解しました。

大学時代、恩師から

「情熱を傾けて頑張ってごらん、必ずたくさんの人や知恵が集まってくるよ」という言葉をいただいたそうです。

その言葉を「情熱は磁石だ」と言い換えて、以来 大切にしながら歩んでこられたそうです。

まさに不撓不屈の情熱が磁石となって、

多くの人、モノ、お金を引き寄せたのです。

見習いたいと思います。

最後に、講演の締め括りのスライド

パラリンピックの父 グッドマン博士の言葉を紹介します。

パラリンピック 荒井秀樹 監督に学ぶ

パラリンピックは、私たちに

限界への挑戦という

人間の持つ深い可能性を教えてくれていたのだと知りました。