138億年前に宇宙誕生(ビッグバン)し、
46億年前に太陽系に地球が誕生しました。
地質時代とは聞き慣れない用語ですが、
約46億年前の地球の誕生から現在までの内、
直近数千年の記録の残っている有史時代(歴史時代)以前のことで
地質学的な手法でしか研究できない時代の事を指します。
上記が地質時代区分の概略になりますが、
新生代 第4紀は「更新世」と「完新世」に分けられます。
更新世が250万年続いたのに対し、完新世は1万1700年とかなり短いとされています。
これまで、地質時代の最後は「完新世」と考えられてきたのですが、
地質学上の明らかな変化の時代が存在し、
新しい地質時代区分が必要であると解釈されるようになったのです。
それが、アントロポセン:「人新世(じんしんせい)」です。
国際地質科学連合が近いうちに正式に定義するそうです。
アントロポセンの用語は、「人間」を意味するギリシャ語のanthropos
「近年」や「新しい」を意味するkainosに由来するそうです。
それは、地球が人間によって永遠に変化されられたことを示します。
人類が発明した多数の新化合物、核実験による放射性同位体、
土壌に含まれるリン酸塩と窒素(人口肥料成分)、
プラスチック片、コンクリート粒子、ニワトリの骨などが
地球上のいたるところで確認され、
最終氷期が地球に残した爪痕以上の影響を
この地球に与えているというのです。
これは、大変な発見(解釈?)です。
そして、人間がつくり出した「人新世」を生きる私たちの身体に
激変が起きていると警告しているのです。
この大前提を最初に押さえておかないと
本書の主張のスケールの大きさが理解できないと思います。
詳細は本書を精読して欲しいのですが、
人間は、農業革命、産業革命、都市革命、デジタル革命によって、
ライフスタイルの目まぐるしい変化を生み出しました。
それらの累積によって、今や私たちの身体は適応不全を起こしているのです。
その一例が、腰痛だったり、
反復運動過多損傷(RSI)という手指の病気だったりするのです。
その原因として挙げられるのが、長時間の座位です。
なんだ、そんなことかと思われるかもしれませんが、
デジタル革命以後のオフィスワークでの長時間の座位がもたらす悪影響は計り知れません。
それは肥満を誘発することは言うまでもありません。
飼われていて自分で食料を探す必要のない動物は、
野生の同種より決まって体重が重いといいます。
野生の状態が良いとは限りませんが、
現代人に肥満が多く、その兆候が加速しているという事実は、
明らかに現代人の生活が問題を孕んでいることを示唆しています。
著者がその解決策の王道として、とにかく歩くことを提唱しているのには、
激しく同意します。
「座っていては歩くことはできない」のであり、
歩くことを頻回に取り入れることで、長時間の座位から逃れるのです。
とはいえ、文明史的な必然から長時間の座位に至っているので
簡単には解決できない問題であることは確かです。
主題からは逸れますが、
「二酸化炭素が増加すると植物の質が低下する」
という卓見およびその機序説明にも感嘆しました。
人新世においては、野菜(植物)の栄養価が低下してしまうのです。
著者の知識量の多さと正確性に驚かされます。
『サピエンス全史』は世界的ベストセラーだけあって示唆に富みますが、
私にとっては、『サピエンス異変』のほうが、
読後の変化(異変)は大きかったといえます。
2019年2月13日