私の拙い経験ではありますが、
後で読み返してみた時に、「本当に自分が書いたのだろうか」と疑ってしまうような文章を書いていることがあります。
勿論、自分が思っている能力以上の文章という意味なのですが、
皆さんにも同じような体験があるのではないでしょうか?
何かに導かれるようにして、一気に書いてしまうような時です。
そんなフロー状態は、私には滅多に訪れませんが、
一流のプロフェッショナルたちは、
それをかなりの確率で実現させているようです。
そんな上級過程を凡人に実現させようという主旨で書かれたのが
『直観を磨く 深く考える七つの技法』です。
さて、巷でもてはやされる「論理思考」は、
今後、AIに置き換えられてしまいます。本当です。
本書の副題になっている「深く考える…」とは、
その「論理思考」を超えるものです。
著者は「論理思考」を超える思考法を「直観思考」と命名し、
それを身体化するため方法論を具体的に紹介しています。
それは正に、熟練の経営者たちが口にする
「直観は過たない、過つのは判断である」の世界です。
本書では、まず「深く考えるための7つの思考法」が紹介されます(第一部)。
第一~第六までは、初級過程の「論理思考」から中級過程だと言います。
ここまでは、「静かな観察者」である「もう一人の自分」を
如何に見出せるかにかかってきます。
3部構成の第一部は、そこまでの解説となります。
■第1部 深く考えるための「七つの思考法」
1. 問題の「循環構造」を俯瞰しながら考える 2. 問題の「矛盾」を解決しようとしないで考える 3. 橋のデザインを考えるのではなく、河の渡り方を考える 4. 専門知識で考えるのではなく、専門知識を横断して考える 5. 本で読んだ知識ではなく、体験から掴んだ智恵で考える 6. 自分の中に複数の人格を育て、人格を切り替えながら考える 7. 心の奥の「賢明なもう一人の自分」と対話しながら考える |
結局、大切なのは、第七の思考法「自己対話」になります。
これは何を意味するかと言いますと、
「賢明なもう一人の自分」の存在をどう見出し、
常態化させるかということになります。
そのための手法が第二、第三部に書かれています。
すなわち、
第二部では、「賢明なもう一人の自分」と対話するための七つの技法が語られ、
第三部では、「賢明なもう一人の自分」が現れるための具体的な七つの身体的技法が解き明かされます。
本書の構成を表にまとめると下記になります。
これを押さえておくと、より深く理解できるのではないかと思います。
「静かな観察者」である「もう一人の自分」を見出すだけでも大変なのですが、
さらにその先の「賢明なもう一人の自分」に出会わせようというのが著者の意図です。
それは、最新の量子科学で解き明かされようとしている
「ゼロ・ポイント・フィールド」に繋がることでもあります。
何故、そのような方向に私たちを誘うのでしょう?
それは、AI時代において、
人間がその輝きを失うことなく、むしろ複数の能力を開花させ、
素晴らしい人生を切り拓くべきだと田坂氏が確信しているからなのでしょう。
私はそう感じています。
誤解を恐れずに、私なりに解釈しますと
- 初級過程:論理思考:自意識のみ
- 中級過程:脱論理?思考:「もう一人の自分」の存在
- 上級過程:直観思考:「賢明なもう一人の自分」の存在
ではないかと思います。
本書は、丁寧に読み込むべきだと思います。
随所に達人の智恵が散りばめられています。
それを自身の血肉とすることが大切です。
愚直に実践することが大切なのです。
そこで私も、田坂氏自身が執筆の際に行う身体的技法から真似をしたいと思います。
パソコンに向かった後、
- 心を整える
- 「大いなる叡智、我が内に流れ入る」と念じる
- 深い呼吸を行う
- 「導き給え」と祈る
執筆を始める。
田坂氏は、これまでも「AI時代の到来は恐怖ではなく希望である」と主張しています。
それにしても、
この著者には、いつもながら驚かされます。
今回は、AIが全く及ばない、人間本来の可能性を開花させる方法を提示しているのですから…。
フィールドに繋がる人間からすれば、
AIは脅威でも何でもありません。
AIがどれほど高速で高容量のハードディスクを持とうが問題外です。
読了後に、そう確信しました。
(2020年2月19日)