鎌田 實 諏訪中央病院名誉院長 を知る人は多いと思います。
著作の『がんばらない』『あきらめない』はベストセラーになりました。
テレビのコメンテーターとして見かけることも多くなりました。
その円熟のコメントは、
多くの人々の健康を支えようとする想いに溢れています。
当法人のイベントMEDの地方会にMED秋田があるのですが、
2018年に鎌田實先生が講演されました。
(こんなビッグネームを講演に呼んでしまう秋田の谷合先生はスゴイ!)
その時の講演動画はこちらをどうぞ。
ついでに第128話もご参照ください。
鎌田先生は長野県の小都市 茅野市で
今日の「地域包括ケア」の先駆けを実現させました。
介護保険の影も形もない時代に、
その方向に歩み出した先見の明には本当に驚かされます。
在宅医療やホスピス医療にも早くから取り組まれ、
それらが地域に豊かな生態系を生み出し、
地域そのものを元気にしています。
地域まるごと健康にしてしまっているのです。
ある意味、諏訪中央病院が示したスタイルは医療界における革命です。
医師の私からすれば、
どうしてそのような先見の明を持つことが出来たのかが
不思議でなりません。
30代で諏訪中央病院の院長に就任してから
コツコツと取り組まれたあらゆることが
一つに繋がって、今やたわわな実を結んでいるのです。
今でこそ諏訪中央病院は全国から患者さんが集まる病院になっているのですが、
かつては赤字続きの病院だったそうです。
収益最大化を病院経営の主軸に据える経営者が多い中で、
鎌田先生は地域住民の健康を第一に考える施策をし続けました。
「地域住民が健康になると誰も病院に来なくなってしまうのでは」と思ってしまいますが、
収益よりも信頼を最優先させて、正しい医療を模索していったのです。
(実際に、そんな病院経営をしたら潰れると何度も忠告を受けたそうです。)
(そんな悪魔のささやきに動じないところがスゴイです。)
鎌田先生の先見の明の秘密を探るべく
この12月に出版されたばかりの最新著を読み始めました。
本書には、様々な「にもかかわらず」が挙げられています。
- 高齢になった「にもかかわらず」
- 病気になった「にもかかわらず」
- 体が衰えた「にもかかわらず」
- お金に悩んでいる「にもかかわらず」
- 人は死ぬ「にもかかわらず」
人生のあらゆる逆境にもめげず
「にもかかわらず」と立ち上がる人たちがたくさん紹介されています。
その多くが、鎌田先生が直接かかわった人たちです。
どうやら、弱い人や困っている人を見つけたら出来る限り助けてしまうというのが
「鎌田式」のようです。
そうした人たちとの数々のエピソードが
鎌田先生ならではの温かいまなざしで切り取られています。
読み終えた後、温かいものが心に遺りました。
(そう、温かい甘酒が体中に染み込んでいく感じです。)
コロナ禍で打ちひしがれている今だからこそ、
余計、そう感じるのかもしれません。
本書は、コロナ禍の逆境「にもかかわらず」、立ち上がらんとする人への応援歌です。
このタイミングで出版されたことに感謝します。
「にもかかわらず」
本当に良いことばです。
「がんばらない」「あきらめない」以上に
世の中を変える力を持ったことば(言霊)だと私は思います。
そして、気づきました。
鎌田先生の歩みは、先見の明などではなく、
深い愛、人間愛に基づいていたということに…。
そう確信しました。
2020年12月23日