人類の進化は、
500~400万年前に現れたアウストラロピテクス
とよばれる猿人に始まります(700万年前という説もあります)。
彼らは直立2足歩行をするようになった初めての生物でしたが、
150万年目には姿を消してしまいました。
その後、ホモ属の240~140万年前にホモ・ハビリス(器用な人)が誕生し、
180~60万年前にホモ・エルガスター(働く人)/ホモ・エレクトゥス、
80~30万年前にホモ・ハイデルベルゲンシス、
25~3万年前にホモ・ネアンデルターレンシスが生息していました。
われわれ現生人類であるホモ・サピエンスは約19万年前に現れ、
今日に至っています。
私たちホモ・サピエンスと比較的近いと考えられる現存種の
チンパンジーやゴリラとの間に大きな隔たりがあるのは、
その間に20種類以上の絶滅した人類がいたからなのです。
これは人類だけの話ではありません。
種と種の間に非連続のギャップや飛躍があるのは、
中間種が絶滅して存在しないがためなのです。
現生人類の特徴は脳にあるといわれます(最たる特徴としては二足歩行が挙げられるでしょうが…)。
何と言っても、ホモ・サピエンスの名前の由来は「賢い人」です。
知性こそ私たちの発展の原動力だった訳です。
では、先の各人類を
脳容積(遺跡骨からの知見のため容積が頼り)の推移で見てみましょう。
初期の人類のアルディピクス・ラミダスの脳容積は400㏄弱で、
今日のチンパンジーと同等、あるいはそれ以下だったようです。
それが、ホモ・ハビリス、ホモ・エレクトゥスの時代になると脳の巨大化が始まります。
240~140万年前のことです。
80~30万年前に誕生したホモ・ハイデルベルゲンシスに至っては、
当初の3倍の1200ccを超えています。
それが私たちに最も近いネアンデルタール人になると、
平均 1550ccに達しています。
一方、その後に出現し、今日まで繁栄を誇っている現生人類のホモ・サピエンスの脳容積は、
平均 1450ccです。
意外に思われるでしょうが、
ネアンデルタール人に知的に勝っているはずのホモ・サピエンスが、
実は単純な脳容積ではネアンデルタール人に負けていたのです。
脳容積ではネアンデルタール人が最大でした。
しかし、彼らはハッシュタグ様の記号程度の文字しか持たなかったようです。
そのため、日常生活で必要な事項を記録するのに脳に記憶するしかなかったと考えられます。
当時の彼らにおいても個人を識別するための名前はあったはずです。
それぞれの個人に付随するたくさんの情報も記憶しなければならなかったでしょう。
今日のわたしたちが住所録や電話帳なしに記憶だけをたよりにするならば、
記憶を維持するだけでも相当な負荷を脳に掛けることは容易に想像できます。
毎日、それらの情報を忘れないために声に出して反復していたかもしれません。
これでは、日常生活を超えて、
未来に発展的な知的活動をしていく余裕はなかったに違いありません。
逆に文字を持たなかったが故に、
彼らの脳は記憶器官として肥大化せざるを得なかったとも考えられます。
一方、文字を発明し、次々と外的足場を築いて行ったホモ・サピエンスは
脳を記憶の倉庫として肥大化させる必要はなく、
外的足場とのインタラクティブな関係強化により高度化しながらも
縮小化できたのではないかと思います。
人類進化における脳の巨大化はネアンデルタール人までは最高の戦略でした。
しかし、私たちの直接の祖先のホモ・サピエンスが文字を発明し、
「外的足場」を築き始めた後には、進化上の最高戦略ではなくなりました。
それを証明するかのごとく、
現代人の平均の脳容積は徐々に縮小し1350ccになっています。
驚くべきことに、
誰もが天才と認めるアインシュタインの脳が私たちの平均より小さかったそうです。
もはや、脳のサイズは今日の社会で求められる知的能力とは無関係のようです。
大切なのは、使い方なのです。
これは脳に限った話ではありません。
筋肉もそうです。
筋骨隆々のボディビルダーが必ずしも良きパフォーマンスを発揮できる訳ではありません。
むしろ、優れたアスリートの筋肉は、適量に留まります。
大リーガーのイチロー選手が、
過度のウエイトトレーニングや過量の筋肉を否定していたことにも通じます。
要するに、それをどう使うかが勝負の分かれ道なのです。
話を脳に戻しましょう。
脳容積の巨大化は過去の戦略だと述べました。
巨大化が過去の戦略だという話は、
知識量にも当てはまるような気がしています。
以前は博覧強記の人物が尊敬の念で見られましたが、
これからはそれらの知識をどう使うかが重要なのです。
そして、それはお金にも当てはまると思っています。
お金の所有は最高の戦略ではありません。
どう使うかが大切なのです。
そう言って、使い過ぎでマイナスバランス続きの
自分の収支を正当化するのでした(笑)。
2020年1月15日